平成21年における公害紛争事件の終結事例について4 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・相模原市における振動被害原因裁定申請事件
1 事案の概要
本件は、相模原市在住の申請人が、不眠、頭痛、手足のしびれ等の健康被害を受けているところ、この被害は申請人宅の隣家に居住する被申請人が自宅に設置して稼働させている機器から発生する振動が原因であるとする裁定を求めたものです。
申請人は、「(1)被申請人は自宅内に水圧式マッサージベッド、足洗器具、マッサージ機械(本件機器)を設置し、稼働させており、これらから上下の振動を中心とする振動が発生している。振動が被申請人宅から申請人宅に音と一緒に伝わってくることや、申請人宅内で振動を感知した時に被申請人宅の窓越し
に上記ベッドの作動ランプが点灯したことから、本件機器が振動の原因であると考えられる。

(2)申請人は、本件機器からの振動を長期間、日常的に感知したため健康被害を受けた。」と主張しました。一方、被申請人は、「本件機器を自宅に設置したことはなく、振動が生じるはずがない。」などとして、原因関係を否定しました。
2 手続の経過
公害等調整委員会は、本件申請の受付後、直ちに裁定委員会を設け、2回の審問期日を開催するとともに、振動体感調査を含む現地での事実調査を実施しました。

事案の性質にかんがみ、裁定委員会は話合いによる紛争解決をも打診しましたが、合意に至らず、平成21年10月26日付けで裁定が出され、本件は終結しました。
3 裁定の概要
裁定では、

q申請人が自宅内で日常的に知覚している大きな継続的振動を、客観的に示す測定値はなく、申請人宅以外の近隣居住者で感知した者もなく、事実調査でも確認されず、振動の態様、程度を客観的に認定できない、

w申請人は本件機器を振動発生源と主張するが、事実調査でも被申請人宅内でその存在が確認されないなど、存在、形状、稼働状況を明らかにする証拠がなく、本件機器が作動した場合にいかなる態様、程度の振動が発生するのかを認定できない上、事実調査の際の振動体感調査では、被申請人宅で洗濯機の脱水や階段の昇降を行い、比較的大きい揺れを一定時間継続して人為的に発生させたが、申請人はそれらに対応する振動を自宅内で感知せず、また、被申請人宅で発生した振動が申請人宅のみに伝播するとの申請人の主張を合理的に説明できる事情も明らかでないことから、本件機器が振動発生源であるとの事実は認められない、と判断されました。

そして、本件機器から申請人が知覚しているような振動が発生している事実は認められないとして、本件申請は棄却されました。
4 本件の評価
本件には、いくつかの特徴、注目すべき点があります。
(1)まず、この事案は、以前から相模原市公害苦情相談担当部署が振動測定などの対応をしていましたが、市の公害苦情相談に係属中の事案について、担当者が、公害等調整委員会の裁定制度を紹介し、本件申請に至った点が特徴的です。

一般に、事実関係に深刻な争いのある事案、因果関係が複雑な事案、長期係属事案などについては、公害等調整委員会の裁定制度を含む公害紛争処理制度の利用が有意義と考えられます。

本件では、振動発生の有無に関する主張の違いが大きく、裁定制度の利用は適切であったといえます。
(2)また、公害等調整委員会の裁定事件で、「公害」の相当範囲性の要件を緩やかに解釈し、隣家居住者間の紛争をも処理の対象とした点も注目されます。公害等調整委員会では、公害苦情相談制度との連携を強化し、近時増加中の都市型公害紛争をより円滑に解決するため、大規模で複雑困難な事案に限らず、様々な事案を受理しています。
(3)加えて、本件で、計画的審理の実施により、申請受理から7か月余りで裁定に至った点も併せてご紹介します。


runより:相模原市には公害苦情相談担当部署ってのがあるんですね。

ですが、棄却されちゃいました。残念な判例です。