・4.その他の大人のがん
被曝評価の大きな制約があるにも関わらず、職業被曝と成人の白血病(11 章参照)の統計学的に有意な関連性を示す多数の研究が存在する。
Lowenthal ら(2007)によるごく最近の研究は、高圧送電線に近い住居と成人白血病の関連性を調査した。
彼らは、高圧送電線の近くに住む全ての成人でリスク上昇を発見したが、送電線の300m以内で生まれてから最初の15年間を過ごした人は、オッズ比が3.23倍(95%信頼区間=1.26-8.29)だった。
この研究は、2 つの重要な結論に裏付けを与える。
成人白血病も電磁場被曝に関係があるということ、そして子どもの時の被曝は成人の病気のリスクを増やすということだ。
電機関連労働者と、職場で被曝する労働者の成人脳腫瘍のリスクが非常に大きいことが、Kheifets ら(1995)のメタ解析(大勢の人の研究の再検討)で報告された。
これは肺がんや間接喫煙とほぼ同じ大きさのリスクだ(US DHHS, 2006)。
このメタ解析は、12 か国で行なわれた29 の研究を含む。
関連するリスクは、全脳腫瘍のリスクについて1.16 倍(信頼区間=1.081.24)、または16%増加と報告された。
神経こう腫については、電気関連労働者で、リスク評価は1.39 倍(CI=1.07-1.82)、または39%のリスク増加と報告された。
Kheifets ら(2001)による2 回目のメタ解析は、1995 年以降に発表された後、9 つの新しい研究結果を追加した。
それは、1995 年からの相対的なリスク評価における小さな変化を示す、新しい包括評価(オッズ比=1.16 倍、信頼区間1.08-1.01)を報告した。
被曝と乳がんの関連性についての証拠は、男性で比較的強く(Erren、2001)、いくつかの研究(全てではない)は、被曝が増えると女性の乳がんも増える事を示す(12 章参照)。
脳腫瘍と聴神経腫は、被曝した人の間でもっと一般的だ(10 章参照)。
その他のがんについて発表された証拠は少ないが、Charles ら(2003)は、電磁場被曝が最も高い10%に分類された労働者は、被曝量が少ないグループより、前立腺がんで2 倍死ぬようだと報告した(オッズ比2.02 倍、95%信頼区間=1.34-3.04)。Villeneuve ら(2000)は、電磁場に被曝する電気施設の労働者の間で非ホジキンリンパ腫(訳注:ホジキン病以外の悪性リンパ腫の総称)が統計学的に有意に増加することを報告した。
一方、Tynes ら(2003)は、高圧送電線の近くに住む人の間で悪性メラノーマのリスク増加を報告した。
これらの結果は反復が必要だが、白血病以外の成人がんと被曝の関連性を示唆している。
たとえ全ての報告が確実に同じポジティブな関連性を示さなかったとしても、全体的に、電磁場被曝に関する成人の病気の科学的証拠は、予防的手段がふさわしい成人のがんについて充分に強固だ。
電磁場に関連性があるかもしれない病気のパターンを理解する私たちの能力を、多くの要因が減らすので、これはとくに信頼できる:その要因とは、例えば、比較するための被曝していない人口は存在しないこと、被曝評価のその他の困難さ、電磁場被曝と成人のがんや神経変性の病気の関連性についての証拠は十分に強く、今、電磁場被曝を減らす用心のための行動を起こすことに値すること。