・妊娠と免疫
私たちの体は、自己以外と自己を厳密に区別していて、自己以外を攻撃するようになっています。
これが免疫です。
妊娠は自分の胎内に他者が存在する特殊な状態です。
胎児が攻撃されないように、妊娠中は免疫を低下させて胎児が排除されるのを防いでいます。
しかし、免疫力の低下は妊娠週数によるのです。妊娠40週を三つに分けると第一期(4週から15週まで)では、非妊時とかわらず、第二期(16週から27週まで)には少しずつ低下し、第三期(28週から39週まで)にはさらに低下し、分娩直前に最低となり分娩後再上昇します。
死亡が報告されるのは第三期が最も多いのです。
アメリカで、2009年4月半ばから6月半ばの間に新型インフルエンザでなくなった妊婦は、6人です。
その内訳は、妊娠11週1人、妊娠27週1人、妊娠30週1人、妊娠32週、妊娠35週1人、妊娠36週1人となっています。
妊娠11週の人は血栓の出来やすい素因の持ち主でした。その他の人も2人が病気をもっていました。
ブラジル、メキシコでの妊婦のインフルエンザによる死亡の詳細は不明です。しかしこれらの国では妊産婦死亡率はとても高いのです。
妊産婦死亡は日本では、2004年には出生10万人に対し4.8人、2008年に10万人に対し3.6人です。
ブラジルでは10万人に対し260人(2000年)でした。
メキシコでは50.2人(2003年)です。
それに対し妊産婦死亡が3.8人(2004年)と低いオーストラリアでは、冬が過ぎたあとの妊婦の死亡(妊娠時期の詳細は不明です)は4人と少なかったのです。
オーストラリアでは新型インフルエンザの死亡率は当初の予想(諸外国における平均値)より低かったのです。
死亡が少ないはずの日本で、脳症で死ぬ人が多いとすればその原因も検討すべきです。
ボルタレンなどの解熱剤の乱用によるサイトカインストーム※2が起こって、そこにタミフル等の脳に影響を与える抗ウィルス剤を投与したために心呼吸停止がおこることが原因ではないかなど、インフルエンザの経過の取り扱いの差異を詳細に検討する必要もあります。
メキシコでは、人口の50%は医療保険に入れず、インフルエンザにかかったとしても医療を受けられない人がたくさんいます。
この人たちは、栄養状態も悪く、免疫力も低下しているでしょうし、薬局でボルタレンなどの解熱剤を買う以外に方法はないのです。
妊娠初期の器官形成期はワクチンをさけるべきです
新型インフルエンザの蔓延が始まったメキシコでは妊婦の死亡が例外的に多いと報告され、日本でも妊婦は優先的に新型インフルエンザワクチンを接種することになりました。