・トルエンの放散速度については、どの測定点も数μg/m2h と低く、5-2 のクラックがある箇所が若干高かった。
しかし、クラックのある部分で放散が過去に多かったとの推察は可能であろう。
6 月にFLEC 法やADSEC 法で天井面を測定した値と比べると著しく低下しており、化粧石膏吸音ボードへの吸着や天井裏に溜まった空気の影響を考慮しても、8 月の天井裏換気対策によって放散速度は下がったと思われる。
また、気中濃度についても急激に減衰しており、全体的に低く、階による違いは見られなかった。また、パラジクロロベンゼンはほとんど検出されなかった。
これに対し、キシレンの放散速度は 3 階の3-1 では非常に低い値だったが、4 階の5-2 ではクラックありで約70μg/m2h、クラックなしで約30μg/m2h と、階数による違い、クラックの有無による明確な違いが見られた。
また、気中濃度についても、基準値を大幅に下回る低い値ではあるが、3 階よりも4 階の教室の方が高くなっていた。
このことから、屋上パラペットに使われた防水材から放散したキシレンが躯体のクラックを通じて拡散し、4 階の室内濃度に影響を与えた可能性が考えられた。
トルエンでは4 階のクラックがある箇所が若干高いという傾向は見られたが、大きな差はなかった。
一方、キシレンでは違いが見られた理由として、チャンバー法による測定結果から元々のトルエン含有量が少なかったことや、トルエンの方が放散が早く、8 月の対策によって測定時には放散がかなり進んでいたことが考えられる。
このため、改修工事完了後の一定期間はトルエンについても屋上パラペットに使われた防水材が室内濃度に影響を与えていた可能性は否定できない。
室内空気への放散は確認されたが、現時点での影響は少ないと考えられた。しかし、安全のために今後とも室内換気を確保することが重要である。