・3、ダイオキシン類の発生と汚染経路
発生源は、大きく分けて2つあると考えられる。
ひとつは廃棄物の焼却や製鋼の熔解工程工程などの燃焼工程であり、ひとつは農薬やかつてのPCB製造におけるベンゼンや塩素を原材料にした化学合成工程である。
燃焼行程での発生は周知のとおり施設の改善等により抑制が図られて、一定の成果もあげられている。
農薬の合成工程での発生は、日本国内では製造の中止や製造原材料の高品質のものへの変換によって対策が図られているが、外国での製造では、私が依頼分析した1990年代製の木綿布団わたからもダイオキシン類が検出されているし、また近年のアメリカの報告書から2,4-D農薬を散布する従事者の間に白血病患者が多くあるというようなことからみると、現在も低コストを維持するために製造の原材料に不純物を多く含む低級品を使用している可能性がある。
そして2,4-D除草剤は、小麦、トウモロコシ、大豆、綿花等の栽培に広範囲に使われているのであり、このような栽培で育成された汚染がある農産物が例えば畜産における飼料などとなったとき、卵の卵黄、チーズ、牛乳など脂質が多いもので食品汚染がおこり、これを摂取したときにこれらに含まれるダイオキシン類が抗体になってADを発症しているのではないかという推定も否定はできないのである。
また魚介類も汚染海域で採られたものは汚染が大きいので注意を要する。依頼分析を実施した布団わたのひとつは1970年の生産であり、30年を経過した時点でもダイオキシン類が残留していて検出があったのであるが、逆算して清算された当時の濃度を推計すると少なくみても100pg-TEQ/gを下らない(ダイオキシン類の半減期を4年と仮定した場合)状況があったと推定されるのであり、近年の食品中の平均値が0.05pg-TEQ/gであり、また河川等の底泥の除去の目安ともいえる環境基準値が150pg-TEQ/gであるから、こちらに近いほどの非常に高濃度の汚染が存在したとみられた。
これが汚染経路の大きな部分を占めたと考えられる。