・綺麗なものとは
私の専門は細菌学、ウイルス学、寄生虫学など様々なばい菌に関することを研究していました。
ちょうど30年前、日本がバブル期で、多くの商社がインドネシアなど海外に進出していた時です。
当時インドネシアのカリマンタン島で木材を切ると、数十億円と儲けることのできた時代です。ですから多くの商社がインドネシアの山奥に進出しました。
ところが、マラリアやアメーバなど恐い熱帯病にかかってくるのです。
そこで私はインドネシアのカリマンタン島に行きました。
すばらしいところでした。というのは、うんちが川に流れているんですね。
うんちをしていると、その横で洗濯をしているんですね。
洗濯は良いんですけど、歯磨きもやっているんですよ。
川を調べたら、うんちから回虫の卵が見える。
若い子も、綺麗な子も、お風呂の水をその川で済ませていました。
うんちの流れる川で子ども達が泳いでいるのを見て、「君たちはなんて野蛮だ、こんなところで泳いでいたら病気になるよ」と思いました。
ところが肌を見たらとても気持ちの良い黒光り、みんなとっても綺麗ですよ。
そして、子ども達に、「君たちは野蛮人だよ。うんちが流れてるところでよく泳ぐよ」と言いました。
そしたら子ども達が「ドクター、うんち、おしっこなぜ汚いのですか?」と言われました。
当時私は医者になったばかりで、うんちは排泄物だから汚いに決まっているじゃないかと言ったわけです。
ところが今考えると、うんち、おしっこは本当に汚いでしょうか?うんちの成分の半分はお腹の中にいた腸内細菌ですよ。
生きた腸内細菌も死んだ腸内細菌も。前の日、消化しなかった繊維、水分、ミネラル、そんな汚いものではないですよ。特に出たばかりのおしっこは無菌ですよ。
だからばい菌がいるのが汚い、いないのが綺麗といいますと、一番世の中で綺麗なものは出たばっかりのおしっこですよ。
一番汚いのは口の中です。
ばい菌の数と種類が一番多いのは口の中ですよ。
だから日本では平気でキスをして、おしっこをなめられない、本当におかしいですよ。
それを言うと私がおかしいと言われますけれど(笑)。非常に日本人はうんち、おしっこに関して、強い嫌悪感を持っている。行き過ぎているんですね。
日本では、うんちが流れている川で顔を洗い、歯磨きをするなんてとんでもないと言われていますけれど、ご存じのようにインドのガンジス川では、うんち、おしっこが流れ、人や動物の死体も流れているんですよ。
そこで口を濯いだり、身を浄めたりする人達が非常に多い。
つまり世界を見ると日本は特殊ですよ。