・◇筆者の疑問
■20℃の換算数値で消えた「不適切対応」
今回の市教委の報告書の内容は3月の定例市議会の答弁用に作成されたものと同様だという説明があったため改めて通読してみた筆者がまず驚いたのは、昨年12月19日の全体会議の席上で西田教育長がくり返し公言した「5度での完成検査は不適切な対応で反省している」との認識(本紙12月23日付ルポに詳報)がどこにも書かれていないことだった。
その代わりに初めて明示されたのが分析業者に試算してもらった「5度を20度に換算した場合のホルムアルデヒド濃度0・07PPM(指針値は0・08PPM)」という数字だ。
つまり5度という低温条件のままで測定した数値でも指針値を下回っており、不適切ではなかったという「まとめ」になった訳だ。
昨年12月の全体会議の中で出席者から「文科省から25度という室内温度で測定して基準値以下なのを確認してから引き渡しを受けるように、という通知が出ているのになぜ加温を指示しなかったのか」と質問された西田教育長は「温度を25度まで上げる指示をしなかったことは確かに不適切でした。
温度を上げていたら少なくとも今よりは原因特定にも近づくことができたと思います」とはっきり答弁していた。
児童、教職員の安全に責任を持つ市教育長が「5度で測らずに25度で測るべきだった、発症の報告を受けて即時使用中止ができなかったことも反省点」と公の場で述べたことで、その後の責任論議も大きく前進するに違いないと受け止めた筆者の判断はここに至って停止せざるを得ない。
建設業者の低温検査も市教委の安全ゴーサイン判断も「不適切」ではなく「20度に換算しても指針値以下」なのだから妥当な判断だったという総括には、当初から消えずに筆者の中に残っている疑問をあえて提示しておくことにする。
25度に加温測定すべきだったと反省したのならなぜ25度に換算してもらわなかったのだろう。
合板から放散されるホルムアルデヒドの放散速度は「1・09の温度差乗に比例する」というのがシックハウス関連書籍には必ず出ている一般常識であることから単純に20度と25度の間の温度差を代入すれば指針値はオーバーしてしまうのでないのだろうか。
ちなみに『シックハウス症候群とその対策』(吉川敏一編・オーム社刊)77ページには「ガイドラインに示された指針値は25度の状態における室内空気1立方メートルに含まれる化学物質の量で示されている。
労働安全衛生法作業環境評価基準では25度、建材などのホルムアルデヒドなどの放散速度は28度における濃度測定に基づき算出することになっている」と明記されている。
もし、とあえてつけ加えるならば、校舎が完成して引き渡しを受ける前に、25度、あるいは28度まで加温して測定していたら、指針値を超すホルムアルデヒドなどが検出され、しかるべき改善対策が早急に施され、児童や教職員が一年以上たった今もなお、さまざまな化学物質に過敏に反応して体調を悪化させてしまうような事態は最初から避けられていたのではないか、という筆者の思いは強まるばかりだ。
■「信頼できる測定値は15℃~35℃の範囲」どう読む?
さらに前掲書の記述に見逃せない指摘がある。「(小向小新校舎完成時に業者が行った)分子拡散型サンプラー法(パッシブサンプラー法)による測定の欠点は測定値が室温の影響を受けることであるが、15度~30度の範囲であれば測定値の信頼性に問題がないものと思われる」。
つまり15度より低い室温で測定した数値には信頼性が乏しいという指摘だ。
この指摘がもし正しいならば5度で測った数値を20度ないし25度に換算して判断することそのものの妥当性が根底から崩れてしまうのではないだろうか。
runより:胆沢第一小学校でも同じ事が言えそうですね。