・2.3 ばく露評価
2.3.1 概論
電界および磁界は複合的なもので、複数の異なった物理的パラメータによって特性を示すことができる。
これらパラメータの一部は、2.1 節でより詳細に述べている。
一般に、パラメータとしては、平均レベルのほか、過渡現象、高調波成分、ピーク値、閾値の超過時間が含まれる。
これのパラメータ、あるいはパラメータの組み合わせが仮にあるとしても、どの組み合わせが健康影響の誘発に関連するのかは不明である。
例えば、発がん現象について生物理学的な相互作用メカニズムが仮にわかっているとすれば 、危険なばく露パラメータを、ばく露に関わるタイミングを含めて、特定することが可能になるであろう。
しかしながら、一般的に認められたメカニズムが欠如していることから、疫学的研究における大部分のばく露評価は、界の特性全てではなく、その一部と関連付けられているに過ぎない時間加重平均の尺度に基づいている 。
電界および磁界の物理的特性については、2.1 節で詳述した。電界および磁界へのばく露の特性のうち、疫学研究のためのばく露評価を特に困難にする一部の特性を以下に示す。
: ばく露の普及率。 集団内の全ての人がある程度のELF電界および磁界にばく露されており、ばく露評価は、ばく露を受けた人々とばく露を受けなかった人々とに分類するのではなく、ばく露の度合いの大きな人々をばく露の度合いの小さな人々と分けるだけである。
: 被験者がばく露を同定できないこと。
電界および磁界へのばく露は、どこででも起こることであるが、通常、ばく露された人が感知したり、記憶にとどめたりできるものではない。
したがって、疫学的研究ではアンケートだけに依拠しており、過去のばく露の特性を正しく把握することができない。
: 「高度」ばく露と「低度」ばく露とを明確に対比できないこと。集団内の「高ばく露」者と「中ばく露」者が受けた平均電磁界強度を区別する差は大きくはない。家庭内の平均磁界の代表値は、約0.05~0.1μT程度であろう。
Ahlbom 等(2000)などの小児白血病と磁界のプール分析では、高ばく露カテゴリーとして0.4μTを使用している。
従って、ばく露評価方法では、2または4倍程度しか差がないばく露を、確実に分類する必要がある。
「高ばく露」を引き起こすと考えられるほとんどの職業環境においてさえも、磁界測定値の平均は、居住環境で測定したものよりも1桁程度高いだけである(Kheifets等、1995)。