・2.2.1.2 人工的な界
ELF 電界の支配的な発生源は常に人間の活動の結果であり、特に、電力系統の作動や家庭内での主な電気製品の使用によるものである。
2.2.1.2.1 架空電力線
電力線近くの地点における電界は、線の電圧、線からの距離、および線を構成する各種の荷電された導体同士の近接度によって決まる。
また、導体半径も関係がある。他の要因が等しければ、導体が太くなると地表レベルでより大きな電界を生じることとなる。更に、電界は導電体によって影響を受ける。
逆相配列の系統はその他の配列よりも電界が小さく、距離による減衰がより急激である。
電界は三相平衡の場合に最小となり、非平衡の場合は増大する。
地表レベルでは、導体が弛みによって最も地面に近づく径間中央に向かって電界が最も大きくなり、径間の端に向かって減少する。
架空電力線から生じる地表レベルでの最大の電界強度は、典型的には10 kV m-1 前後である(AGNIR、2001b;NIEHS、1995)。
2.2.1.2.2 屋内配線および電気製品
屋外の発生源から生じた電界は家屋構造体により著しく減衰する。
一般的に使用される全ての建材は電界の遮蔽効果を発揮するのに十分な導電性を有し、屋内外の電界強度の比は通常、10~100 の範囲またはそれ以上となる(AGNIR、2001b)。
但し、屋内には磁界発生源と同様に電界発生源も存在する。屋内配線は電界を生じ、この電界は配線付近で最も強いが、家屋空間全体としても同様に有意である。
配線により生じる電界は配線の設置様式にも部分的に依存する;金属製トランクや金属管路の内部に施工された配線から外部に生じる電界は非常に小さく、また壁内部の配線から生じる電界は壁の建材に依存した量で減衰する(AGNIR、2001b)。
家庭内のもう1 つの主な電界発生源は、コンセントに接続される電気製品である。
コンセントに接続される電気製品は、コンセントに接続していればいつでも商用周波数の電界を生じる
(磁界はこれとは対照的に、電流が流れている場合に限り発生する)、また電気製品は作動させていない場合でもコンセントに接続されたままにされていることがしばしばある。
電界の規模は電気製品の配線や、どの程度配線が電界を遮蔽する金属材料によって被覆されているかに依存する。
電気製品から生じる電界はその製品から離れると急速に小さくなるが、これは磁界の場合と同様である。
電気製品からの磁界は通常、1~2m 以内でバックグラウンドの磁界に同化
する。
電界の場合、高電界発生源の極近傍にある少数の家庭を除き、屋外の発生源から生じるバックグラウンドの界は存在しない。
従って、電気製品から生じる電界強度は小さいものの、磁界の場合とは異なり、電気製品から距離をとった位置でも依然として感知される。
電界は導電体によって容易に乱されるため、部屋の内部空間の電界が一様であることはほとんどなく、また緩やかに変動していることもほとんどない。多くの物体、特に金属性の物体は電界を乱し、局所的に高い電界強度を生じうる。