・1.2.2 ドシメトリ
過去においては、大半の実験室研究は基礎的指標としての体内誘導電流に基づいており、ドシメトリはこの物理量に着目していた。
外部からのばく露と誘導電界との関連の探求が始まったのは最近のことである。
生物学的影響のより良い理解のため、異なるばく露条件に対する内部電界についてのより多くのデータが必要である。
異なる配置の外部電界および磁界の複合的影響による内部電界の計算を実施すべきである。
基本制限への遵守問題を評価するため、位相が異なる電界および磁界のベクトル合成、および空間的に変動する電界および磁界の寄与度が必要である。
適切な解剖学的モデル化を有する妊婦および胎児の改良モデルについての計算は、極少数しか実施されていない。
小児白血病の問題に関連して、胎児に生じる可能性のある強い誘導電界
を評価することが重要である。
母親の職業的ばく露および居住環境ばく露の両方がこれに関係している。
誘導電界の影響に対してより敏感であることが同定されている、神経網およびその他の複雑な器官以下の系の細胞構造を考慮するためのマイクロドシメトリ・モデルを改善する必要がある。
このモデル化のプロセスでは、細胞膜の電気的ポテンシャルおよび神経伝達物質の放出への影響を考慮する必要もある。
1.2.3 生物物理学的メカニズム
現状におけるメカニズムの理解において、明白な制約がある主要な領域が3 つある。
これらは、ラジカルペア・メカニズム、身体内の磁性粒子、および、神経網のような多細胞系統におけるシグナル-ノイズ比(S/N 比)である。
ラジカルペア・メカニズムは、より妥当な低レベル相互作用メカニズムの一つであるが、細胞の代謝および機能において有意な影響を仲介できることはまだ示されていない。ラジカルペアが発がんのメカニズムに関連するかどうかを判断するため、それが作用するばく露の下限値を理解することが特に重要である。
最近の研究で、ELF 界にばく露された免疫細胞内で活性酸素種が増加することが示されたことを考慮して、免疫反応の一部として活性酸素種を産出する免疫系の細胞を、潜在的なラジカルペア・メカニズムを調査するための細胞モデルに用いることを勧告する。
現時点における証拠に基づけば、ヒトの脳における磁性粒子(マグネタイト結晶)の存在が、環境中のELF 磁界に対する感受性を与えることはなさそうであるが、特定の条件下でそのような感受性が存在するかどうかを、更なる理論的および実験的アプローチによって探求すべきである。
さらに、マグネタイトの存在による、上記で論じたラジカルペア・メカニズムへの何らかの改変を追跡すべきである。
その定量化またはそれに対する制限の決定のための理論的枠組みを開発するため、S/N 比を改善するための多細胞メカニズムが脳内で働く範囲をさらに調査すべきである。海馬および脳のその他の部位における、神経網の閾値および周波数反応の更なる調査を、in vitro アプローチを用いて実施すべきである。