ネオニコチノイドのヒト脳への影響3 | 化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 電磁波過敏症 シックスクール問題を中心としたブログです

・3.神経伝達物質アセチルコリンとその受容体

―昆虫とヒトの神経系の類似と相違―
 では、昆虫には毒性が強くヒトへの影響は少ないといわれているのに、ネオニコチノイドがなぜ人体に影響するのかを考えてみよう。
 アセチルコリンはヒトの神経伝達物質として一番初めに発見された物質である。

まず自律神経系で、さらに神経筋接合部や中枢神経系においても神経伝達物質として働いていることがわかった。

神経系の未発達な生物にも存在が確認されており、アメーバから高等動物まで生体内で重要な働きをしている。

神経系ではアセチルコリンは神経伝達物質として働き、刺激を受けると神経終末のシナプスから放出され、次の神経細胞のアセチルコリン受容体に結合し、情報を伝達する。
 昆虫の神経系は、哺乳類と基本は似ており、脳を含む中枢神経系と末梢神経系からなっている。

神経伝達物質は、中枢ではアセチルコリン、末梢の筋接合部ではグルタミン酸が主に使われており、哺乳類とは逆である。

ネオニコチノイドは昆虫の中枢にあるアセチルコリン受容体に結合し、主要な神経伝達物質アセチルコリンの働きを阻害するので、殺虫効果が高い。 

アセチルコリン受容体には、ヒトでも昆虫でもニコチン性アセチルコリン受容体(以下ニコチン性受容体と表記する)とムスカリン性アセチルコリン受容体がある。

それぞれニコチン、ムスカリン(きのこに含まれる毒素の一種)に特異的な親和性があることから分類され、構造も機能も異なる。

ニコチン性受容体では、神経終末から放出されたアセチルコリンが、次の神経細胞表面にある受容体に結合すると、タンパクの構造変化が起き、イオンを通過させ情報が伝達する。

ムスカリン性受容体ではアセチルコリンが結合すると、近傍の別のタンパクにその情報を伝え、細胞内の生理状態を変化させる。
これらはともに大変重要であるが、ここではネオニコチノイドの標的であるニコチン性受容体に話を絞る。
 ニコチン性受容体は、5個のサブユニットが結合した構造を取っている。

ヒトでは、サブユニットはα1-α10、β1- β4などがあり、α1β1は筋肉で使われている。

その他のサブユニットはそれぞれ特異的な働きをしているが、その中でも脳内で一番多いのはα4β2の組合せ、次に多いのがα7(図2)の受容体で、α7は自律神経系にも多い。

昆虫のニコチン性受容体は哺乳類と基本構造は同じで、5個のサブセット(α、β数種)からなり、哺乳類のニコチン性受容体と類似性が高い。

後述するが、農薬ネオニコチノイドは、昆虫はもとより、哺乳類のニコチン性受容体でも、脳内に多いα4β2、α7には低い親和性を示し、ニセ・神経伝達物質の作用をもつ可能性がある。
 昆虫では、アセチルコリンとニコチン性受容体が中枢神経の主要な神経回路を担っている。

一方、ヒト脳内において、ニコチン性受容体の役割は長らく不明で、近年になり記憶、学習、情緒などで重要な働きが認識されてきた。最近の研究から、脳内ではニコチン性受容体で受ける信号が、ドーパミンなど多くの神経伝達物質の放出を促進することによって、精神機能に様々な影響を及ぼすことが分かってきた。

つまりニコチン性受容体は、ヒト脳内では他の神経伝達物質の調節因子のように働いているのである。

精神疾患では、α7受容体は統合失調症と関連し、α4β2受容体は鬱病と関連しており注目されている。
 さらに哺乳類では、アセチルコリンとその受容体は神経系・筋肉だけでなく、免疫系細胞や胎盤、皮膚の細胞など広範囲な組織にも認められている。

近年その役割が徐々にわかってきて、免疫細胞に多く発現しているニコチン性受容体α7は、免疫系の情報伝達に重要な働きを担っている。