・
6. この病気ではどのような症状がおきますか
自己免疫性肝炎に特徴的な症状はありません。
しかし、初診時には多くの患者さんが何らかの症状を訴えます。
最も多いのは倦怠感で約6割の患者さんが訴えます。慢性ウイルス肝炎に比し黄疸を訴える患者さんは35%と高頻度です。
他の症状としては食思不振、関節痛、発熱などがあります。関節痛、発熱は通常慢性ウイルス肝炎で認められることは少なく、これらの症状とともに肝障害が認められた場合自己免疫性肝炎を考える必要があります。
また、甲状腺機能低下、関節リウマチなど他の自己免疫性疾患が合併する場合も少なくありません。
一方、こうした症状を全く示さず、血液検査での異常をきっかけに発見される患者さんも少なからずあります。
病気が進むと肝硬変になり、腹水、黄疸など肝硬変による症状が現れてきます。ウイルス性の肝硬変に比べ肝細胞癌の合併は大変少ないとされています。
7. この病気にはどのような治療法がありますか
自分自身に対する免疫反応、いわゆる自己免疫反応を抑えるために免疫抑制剤特に副腎皮質ステロイドが治療に用いられます。
この副腎皮質ステロイドは自己免疫性肝炎の特効薬で、殆どの患者さんで投与により血清GOT、GPTは速やかに正常化し、この効果によって診断が確定されることもあります。
この薬剤は副腎の皮質からでるホルモンを化学的に合成したもので、自己免疫性肝炎には一般的にプレドニソロンが使用されます。
通常30から40mg/日で開始し、GOT、GPTの改善を確認しながらゆっくりと減量します。GOT、GPTが正常化しても肝臓の組織内の炎症反応は必ずしも平行して改善するわけではないので、投与は長く続けることが大切です。
副腎皮質ステロイドの効果が不十分あるいは副作用のため使用できない患者さんにはアザチオプリン(イムラン)などの免疫抑制剤を使用します。
また、病気が重く重症度が高い場合には副腎皮質ステロイドを点滴で大量に用いる場合もあります。
副腎皮質ステロイドには消化性潰瘍、満月様顔貌、糖尿病、骨粗鬆症などがありますが、これら副作用についてもよく理解し、病態に応じて予防薬投与を受けることも大切です。
副腎皮質ステロイドの自己中止は自己免疫性肝炎の再燃につながり、再燃すると治療抵抗性になる場合が多いことを理解し、きちんと服用することが大切です。
8. この病気はどういう経過をたどるのですか
発病は一般に緩徐であり、自覚症状は軽微な場合が多いとされています。しかし、治療を行わないとその進行は早く、肝硬変になります。
しかし、適切な治療を行えば、肝臓の炎症は良く改善し、進行もみられなくなります。
日本での調査では治療をきちんと受けている場合、10年の経過では殆ど進行はないようです。また、死亡率も高くありません。