・3. この病気はどのような人に多いのですか
病型により異なりますが、遺伝性素因の影響が大きい病型(家族性高コレステロール血症など)ほど若年から発症し、生活習慣などの環境因子の影響が大きい病型(家族性III型高脂血症、家族性複合型高脂血症など)では成年以降に発症すると考えられます。
男女比については現在研究中ですが、性ホルモン等の影響で動脈硬化発症の危険は女性の方が低いといわれています。
4. この病気の原因はわかっているのですか
いずれの病型も遺伝性素因が関わっていることが多く、さらに環境因子、あるいは生活習慣が加わって発症するものもあります。
原発性高カイロミクロン(食物由来の、中性脂肪に富む軽くて大きなリポ蛋白)血症の遺伝的原因として、カイロミクロンを分解する酵素であるリポ蛋白リパーゼ(LPL)、あるいはこの分解反応に必要なアポリポ蛋白CIIの先天的欠損症があります。
また、原因不明の原発性V型高脂血症もあります。
家族性高コレステロール血症は、体内におけるコレステロールの運搬に最も大切な低比重リポ蛋白(LDL)の受容体の欠損(ホモ接合体)あるいは半欠損(ヘテロ接合体)による疾患です。
この病気の患者さんは血中のLDLを十分に利用できず、変性したLDLが血管組織に沈着した結果、若年から粥状動脈硬化をきたします。
家族性複合型高脂血症も、ある種の遺伝子異常を背景として環境因子によって修飾されて発症すると考えられます。
特発性高コレステロール血症は前の二者を除いてなお原因不明の高コレステロール血症をいいますが、その原因の一つとしてアポ蛋白B100の遺伝子異常のためLDLが受容体と結合できない異常が最近発見されました。
内因性高トリグリセリド血症のうち家族性IV型高脂血症は、肝臓で作られ中性脂肪に富む超低比重リポ蛋白(VLDL)の増加を呈する高脂血症の一つですが、今のところ遺伝的な病因は明らかではありません。
特発性高トリグリセリド血症は、遺伝的異常のない原因不明の疾患ですが、自己免疫などの関与、肝性リパーゼの何らかの異常などが関係していると推測されています。
家族性III型高脂血症の遺伝的背景として、脂質の代謝に重要なアポリポ蛋白Eの異常のため、リポ蛋白がLDL受容体と結合しにくくなり、この状態に何らかの環境因子が加わって発症すると考えられています。
原発性高HDLコレステロール血症は高比重リポ蛋白(HDL)が増加する病気ですが、これにより粥状動脈硬化症を伴う家系があることが報告されています。その原因の一つとして、コレステロールエステル転送蛋白の異常が明らかになっています。