・国民会議では、昨年春より開始したネオニコチノイド系農薬問題への取り組みの一環として、今年2月に「ネオニコチノイド系農薬使用中止等を求める緊急提言」を取りまとめた。そして、この3月から、衆議院、参議院議員に対する政策提言の申し入れ、農林水産省や厚生労働省などとの意見交換を始めたので、簡単にその経過を報告する。
日本では、数年前より岩手県や北海道など各地で、ネオニコチノイド系農薬によると思われるミツバチ大量死が発生している(詳しくはニュースレター57、58号)。
この提言は、現時点でこの農薬の危険性が社会に周知されていないことを指摘するとともに、今後同様の農薬被害が日本各地で発生しないように未然防止を求めるということを目的としたものである。
また、最近ネオニコチノイド汚染が疑われるお茶や果物の大量摂取による健康被害情報が寄せられている。それらの実態解明の必要性についても問題提起をしたものである。
これまで、衆議院議員の森本哲生氏、篠原孝氏、民主党副幹事長で衆議院議員、幹事長室厚生労働省担当である青木愛氏、同じく副幹事長で参議院議員、幹事長室農林水産省担当の一川保夫氏、参議院議員の岡崎トミ子氏、自民党参議院議員の古川俊治氏などに申し入れを行い、意見交換をおこなった。
国民会議からの参加者は、立川涼代表理事、中下裕子副代表理事、国民会議のメンバーかつ農薬問題の民間レベルの国際組織P A N ( Pesticide ActionNetwork)日本代表の田坂興亜氏を含む6名だった。
新しい農薬ネオニコチノイドの存在について、簡潔に情報を提供し、現在の日本のネオニコチノイド系農薬の対策の遅れについて、国民会議の意見を伝えることができたと考える。
さらに、3月19日には、農林水産省・消費者安全局農薬安全管理課・農薬対策室の担当者との話し合い、厚生労働省・医薬食品局食品安全部基準審査課
の担当者との意見交換を行った。
農水省の担当者は、国民会議提言書に添付された文献リストの中の諸外国の対応に関して、それら資料すべてに早急に目を通し、海外諸国のネオニコチノイドへの対応について精査するとのことだった。
また厚生労働省からは、目下、日本におけるネオニコチノイド系農薬の食品残留基準値がきわめて緩く決められていることについて、アセタミプリドについては、基準を少し厳しく改正する手続きが進められているとの報告があった。
新しい残留基準では、モモが5ppmから2ppm、ナシが5ppmから2ppm、
リンゴが5ppmから2ppm、いちごが5ppmから3ppm、お茶が50ppmか30ppmへと変更になる。
ブドウが5ppmのままで変更できない理由について、農作物への現在の残留実態を考えてのことであり、基準を厳しくすることにより、流通に支障をきたさないための配慮から決められているとのことで、同席した国民会議メンバーと議論になった。
生産者側の利益を消費者の健康より優先する姿勢が、このような残留基準値を決める際の判断材料となっている状況はまだ変わっていない。
日本で今回、アセタミプリドの残留基準を厳しくしたとはいえ、改定後の基準でも日本は、EUの基準(モモ、ナシ、リンゴは0.1ppm)の20倍、ブドウは依然としてEU(0.01ppm)の500倍と桁違いに高い値に決められている。
さらに厳しい基準への改定が求められる。
(報告:水野玲子)