・2. この病気にはどのような種類があり、どのような人に多いのですか
最も多くみられるのは、機能亢進性腺腫と呼ばれるものの一部でTSH受容体の変異によるものが知られています。
甲状腺組織が発生する途中で一部の細胞のTSH受容体遺伝子に変異が起こり、TSHが結合しなくても変異TSH受容体が刺激を細胞に送り続けることから甲状腺の一部のみが機能亢進になるもので、甲状腺に塊(結節)を触れますが、甲状腺ホルモン過剰による症状は軽いことが多いものです。
頻度は人口1000人に一人くらいで女性に多く男女比は5-10:1くらいといわれています。50-60歳に多く発見されます。
次にTSH受容体の遺伝子の変異が親から受け継がれたために、甲状腺全体がはれて、機能亢進になり、甲状腺ホルモンを多量に分泌する(スウィッチ・オンの変異)、バセドウ病とよく似ているけれど甲状腺組織に対する抗体が全く証明できない、「遺伝性・家族性甲状腺機能亢進症」があります。
これは極めてまれなもので、1995年にフランスから2家系の報告があっただけで、日本ではまだ報告がありません。
3番目はTSH受容体の遺伝子異常に基づく甲状腺機能低下症で、父親・母親ともにTSH受容体の遺伝子にある程度の異常があり、結果としてTSHが受容体に結合しても刺激が伝わらないことになります(スウィッチ・オフの変異)。
親の世代では、二つある遺伝子の片方は正常であれば、症状はないか、あっても軽いのですが両方の遺伝子を受け継いだ子供に両方の遺伝子異常が重なって症状を出すものです(劣性遺伝)。家族性甲状腺機能低下症の形を示します。この疾患は日本からも数家系の報告があります。
日本では甲状腺機能低下症は慢性甲状腺炎によるものが圧倒的に多く、その中では微々たるものといえます。