・6. この病気ではどのような症状がおきますか
先天性副腎過形成症ではコルチゾールとアルドステロンが不足することから、低血糖、食欲不振、易疲労感、低血圧、塩喪失、循環障害、ショックなどがみられます。
電解質異常として低ナトリウム血症、高カリウム血症がみられます。またACTH過剰による症状として皮膚に黒色の色素沈着もみられます。
その他病型によりさまざまな外性器異常がみられますが、性ステロイド過剰による外性器異常として女児外性器の男性化(陰核肥大、共通泌尿生殖洞など)、逆に性ステロイド不足による異常として男児に尿道下裂、停留睾丸や女性型の外性器などがみられます。
男児のリポイド過形成症、3β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ欠損症、17α-水酸化酵素欠損症では、性ステロイド不足が起こることから外性器は女性化の異常を示し、一方女児の21水酸化酵素欠損症、11β-水酸化酵素欠損症では外性器の男性化の異常がみられます。新生児期から治療をうけていない場合には男女とも思春期早発症がみられることがあります。
さらに女児の3β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ欠損症では性ステロイドが増加することから外性器の男性化がみられます。
女児の17α-水酸化酵素欠損症では女性ホルモンが不足することから二次性徴発達不全や無月経がみられます。
その他、鉱質コルチコイドが不足する18-水酸化酵素欠損症、18-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ欠損症ではアルドステロン不足のみの異常であることから低血圧、塩喪失などの症状が主にみられます。
その他11β-水酸化酵素欠損症では高血圧がみられます。
P450オキシドレダクターゼ欠損症では女児では出生時、外性器の男性化が認められます。
逆に男児には尿道下裂、停留睾丸がおこります。
また17α-水酸化酵素活性低下により性ホルモンが不足することから男子、女子においても二次性徴発達不全がおこります。
さらに21-水酸化酵素活性低下によりコルチゾールが不足し副腎不全をおこすこともあります。またこの病気では頭蓋骨癒合症、橈骨上腕骨癒合症、大腿骨の彎曲、関節拘縮を伴うことがあります。
7. この病気にはどのような治療法がありますか
副腎で作られず身体に不足するステロイドホルモンを服用することで異常な状態を正常化できます。
先天性副腎過形成症では、普段は不足するコルチゾールを生理的な量を服用します。鉱質コルチコイドが不足している場合は、フロリネフを服用します。
この生理的な量の治療で不足しているホルモンを補い、また過剰に分泌されているACTHを正常化できますので、ACTH過剰に伴った副腎性性ステロイド分泌、DOC分泌などを抑制でき、男性化症状、高血圧、電化質異常を改善しえます。
急性副腎不全の症状がある場合には、普段の量の薬の補充では状態を改善できませんので、点滴をして副腎皮質ホルモンの静脈内投与や電解質異常の正常化をはかることが行われます。
また発熱したり、小手術などをうける場合には、普段飲んでいる量の2~3倍量の薬を飲むことが必要です。
さらに下痢、嘔吐などがあり口から食物をとれない時には、点滴などの処置をうけることが勧められます。
定期的な病院での検査で普段飲む量の薬の量が決められます。この病気で飲む薬の量は身体にあるステロイドホルモンの量を正常な量にするだけものです。
決して他の病気の治療に使われているような多い量、すなわち薬理的な量ではありません。
8. この病気はどういう経過をたどるのですか
不足している副腎皮質ホルモンを服用していれば生命予後は良好です。
しかし、薬をきちんと決められた量で飲まないと、成長障害、二次性発達不全、生理不順などがみられます。