・難病情報センターより
1. 副腎酵素欠損症とは
副腎皮質では3種類のステロイドホルモンが作られます。
一つは塩類調節に重要な役割を果たす鉱質コルチコイド、二つ目は生命維持、ストレス反応に重要な働きをする糖質コルチコイド、そして性発達に関係する副腎性アンドロゲン(性ステロイド)です。
これらステロイドホルモンはコレステロールを原料として種々の酵素を介して作られます。
副腎酵素欠損症は、このステロイドホルモンを作る過程に関与する酵素が先天的に欠損することで起こる病気です。
そのほとんどは先天性で、また遺伝性のものですが、中に、酵素障害の程度が軽いもので幼児期から思春期年齢で発症をみるタイプで遅発型と称されるものもあります。
ステロイドホルモンが作られる。この過程には五つのチトクローム酵素(P450)と3β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼの六つの酵素が関与しています。したがって副腎酵素欠損症として七つの病気があることになります。
このうち、特にコルチゾールができないことにより、下垂体から ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)が過剰に分泌される結果副腎が過形成をきたすものを先天性副腎過形成症と呼んでいます。
これにはリポイド過形成症、21水酸化酵素欠損症、11β-水酸化酵素欠損症、17α-水酸化酵素欠損症、3β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ欠損症の五つの病気があります。
その他、鉱質コルチコイドができないもので、過剰なACTH分泌過剰をきたさないものとして18-ヒドロキシラーゼ欠損症、18-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ欠損症があります。
遅発型を示すものは21水酸化酵素欠損症、11β-水酸化酵素欠損症でみられています。
さらに最近では21水酸化酵素,17α水酸化酵素活性がともに低下し,骨奇形を伴う酵素欠損症が報告されました(P450 オキシドレダクターゼ欠損症)。
2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか
副腎酵素欠損症がどれだけ発症しているかは、現在わが国で新生児マススクリーニングが行われている21-水酸化酵素欠損症以外正確な頻度は解っていません。
21-水酸化酵素欠損症が最も多く87.2%であり、リポイド過形成症が5.5%、17α-水酸化酵素欠損症が1.9%、11β-水酸化酵素欠損症が1.7%、3β-ヒドロキシステロイド脱水素欠損症が1.8%です。
各病気の発症頻度には人種差がみられていますが、リポイド過形成症、17α-水酸化酵素欠損症は他人種に比べ日本人において比較的多く発症することが知られています。
P450 オキシドレダクターゼ欠損症の頻度ははっきりとはわかってはいません。
3. この病気はどのような人に多いのですか
各病気とも男女差は認められていません。
病気として発見されるのは先天性の異常であることから大部分は新生児期です。
遅発型のものは、幼児期以降に発症をみます。
4. この病気の原因はわかっているのですか
副腎酵素欠損症は、全てその責任酵素の遺伝子異常によることが明らかとなっています。
リポイド過形成症は、ステロイドホルモン合成の律速段階にあるコレステロールよりプレグネノロンへの合成過程に関与するコレステロールの移送に関わる蛋白であるSteroidogenic Acute Regulatory Protein(StAR)蛋白の異常とコレステロール側鎖切断酵素に欠損があるために起こります。
3β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ欠損症、21水酸化酵素欠損症、11β-水酸化酵素欠損症、17α-水酸化酵素欠損症は、それぞれの酵素の責任遺伝子の異常により発症します。
鉱質コルチコイドが作られない18-水酸化酵素欠損症、18-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ欠損症は同じ遺伝子の異常によって起こりますが、遺伝子異常の種類が異なることによって発症することが明らかにされています。
21水酸化酵素と17α-水酸化酵素の複合欠損はP450オキシドレダクターゼ欠損により起こることが明らかになりました。
5. この病気は遺伝するのですか
常染色体劣性遺伝の遺伝形式をとります。
すなわち劣性遺伝子が二つ持たないと病気にはなりません。
劣性遺伝子を一つづつもつ人同士が結婚して、その子どもが病気になる確率は25%です。21-水酸化酵素欠損症は約1万5千~2万に一人病気の人が生まれることから、この病気で劣性遺伝子を一つもつ人の数は約100人に一人いることになります。
21-水酸化酵素欠損症では突然変異で発症する例もあることが知られています。