・ムコ多糖症
◆大きくⅠ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ、Ⅵ、Ⅶ型の6つの型に分けられ、Ⅱ型のみがX連鎖性劣性遺伝、他は常染色体性劣性遺伝
◆ムコ多糖を分解する種々の酵素の欠損により、結合組織を中心にムコ多糖が蓄積して症状を起こす。異常なムコ多糖が尿中に排泄される。欠損する酵素の種類により病型と症状が異なる。
◆病型と症状
欠損酵素の種類および症状により以下のように分類されている。ムコ多糖症の一般的な症状は、骨の変形、関節の拘縮、大きな舌、難聴、心臓弁の障害、肝臓や脾臓の腫大、臍ヘルニア、鼠径ヘルニア、皮膚の肥厚、多毛などで、それぞれの症状の程度は病型によって違っている。
さらに、眼の症状や知能障害については、病型によってあったりなかったりする。
・Ⅰ型:α-L-イズロニダーゼの欠損。
上記一般症状に加え、角膜の混濁がある。
乳児期から症状が始まって急激に進行し、知能障害を伴う重症のハーラー病(Hurler病)と、幼児期から小児期に症状が始まり、ゆっくりと進行して知能障害がない軽症のシャイエ病(Scheie病)とがある。
・Ⅱ型(Hunter病):α-イズロネート 2-スルファターゼの欠損。
重症型と軽症型がある。
重症型は一般症状と知能障害がある。軽症型は知能障害がない。
・Ⅲ型(Sanfilippo病):4つの種類の酵素欠損が存在し、A、B、C、D型とされている。
A型とB型が多く、C型、D型はまれである。
多毛以外の一般症状は極めて軽いが、知能障害が重度であり深刻である。
・Ⅳ型(Morquio病):N-アセチルグルコサミン6硫酸スルファターゼ欠損のA型とβ-ガラクトシダーゼ欠損のB型とがあるが、日本人ではほぼA型のみである。
骨の変形が極めて強く、そのほかの一般症状は軽度である。関節はむしろ柔らかい。角膜混濁があり、知能障害は無い。頚椎骨の変形や軟部組織の肥厚のために脊髄の神経が圧迫されて次第に手足の麻痺が起こる。
・Ⅵ型(Maroteaux-Lamy病):アリルスルファターゼBの欠損。一般症状に加えて角膜混濁がある。知能障害は無い。
・Ⅶ型(Sly病):β-グルクロニダーゼの欠損。乳児型ではハーラー病に似ている。
軽症の小児型ではⅣ型に似ている。
◆治療
骨髄移植、臍帯血移植:Ⅰ型、Ⅱ型、Ⅵ型、Ⅶ型で効果が認められているが、程度は様々である。
・酵素補充療法:Ⅰ型では「アウドラザイム」、Ⅱ型では「エラプレース」の酵素治療薬があり保険診療が行われている。
VⅠ型の「ナグラザイム」の酵素治療薬も2008年には保険診療が可能となる見通しである。
いずれも、週1回の点滴による治療である。効果の程度は骨髄移植とほぼ同様である。
シアリドーシス
◆常染色体性劣性遺伝
◆シアリダーゼの欠損により、種々の臓器にシアル酸を含むオリゴ糖が全身に蓄積して症状を起こす。
◆病型と症状
・Ⅰ型:10歳代に神経症状がおこる。
ミオクローヌスといわれるからだがピクピクする痙攣様の症状と視力障害が起こる。
・Ⅱ型:乳児型では、乳児期早期から、ムコ多糖症に似た骨の変形と肝臓や脾臓の腫大、神経症状があり、進行する。
若年型では幼児期よりムコ多糖症に似た骨の変形と肝臓や脾臓の腫大、神経症状が起こりゆっくりと進行する。
◆治療
効果的な治療法は無い。