慢性血栓塞栓性肺高血圧症 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・5.手術療法
1)肺血栓内膜摘除術
ワーファリンなどの薬を半年以上服用していても自覚症状の改善がみられず、平らな道を歩いても息切れを感じる患者さんでは、手術により自覚症状や肺高血圧が非常によくなる人がいます。

手術の必要があるかどうかを判定するために、首や足の血管から直径2~3mm程度の細い管を肺動脈までもっていき、肺動脈の圧を測ったり、肺動脈が良くみえるように造影剤という薬を使った検査をする必要があります。

肺動脈の平均圧は正常では15mmHg程度ですが、この圧が30mmHgより高い症例で、手術的に血栓が摘出できる部位にある患者さんでは手術の適応となります。

手術の方法としては、全身麻酔で胸骨の正中を切開し、心臓を一度完全に止め、人工心肺という器械を心臓と肺のかわりに使って行う方法が標準的ですが、約8時間近くかかる大手術です。

アメリカのサンディエゴの大学では、この手術による死亡率が10%を切っています。他の施設では、以前は20%前後の死亡率でしたが、最近死亡率の低下がみられてきています。

日本においても、10~20%の死亡率に低下してきていますが、高齢者、重症例や血栓が手術でとりづらいところにある患者さんの手術の死亡率は高いとされています。

日本でのこの手術は、主として、国立循環器病センターと千葉大学(手術は千葉医療センター)、藤田保健衛生大学、でその多くが施行されています。

この手術は、胸部外科領域の手術の中でも難易度の高い手術とされており、熟練した心臓血管外科医のいる施設での実施が好ましいものといえます。

2)肺移植
肺移植の適応疾患の1つに、この特発性慢性血栓塞栓症(肺高血圧型)が含まれています。

特に、1).の肺血栓内膜摘除術が困難な細い肺動脈に血栓が詰まっている症例や、極めて重症な症例では肺移植が適応となります。

日本においては、最近肺移植の実施施設が増えて、東北大学、京都大学、大阪大学、岡山大学に加え、福岡大学、長崎大学、獨協大学、千葉大学の計8施設が限定されています。

そのどこかの施設から申請してもらい、適応有りと認定されれば肺移植のレシピエントとして待機することになります。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか
一般に慢性肺血栓塞栓症の経過ないし予後は、肺高血圧の程度とよく相関するとされています。

通常、肺動脈圧が30mmHg以下の症例は、ワルファリン服用と在宅酸素療法を続けていれば、10年生存率も100%と非常に良く、経過とともに次第に血栓が溶けて症状も良くなっていく患者さんもみられます。

しかしワルファリンを中止すると再発する患者さんも多いため、慢性肺血栓塞栓症と診断された患者さんは、仮に症状が良くなっても薬を飲み続ける必要があります。

肺動脈圧が30mmHgを超えるような慢性血栓塞栓性肺高血圧症は、以前の報告では5年生存率30%と極めて不良で、多くの患者さんでは次第にじっとしていても息切れを感ずるようになり、体がむくみ、尿が出なくなる右心不全状態へと進行し、死亡するとされていました。

しかし、在宅酸素療法やワルファリン治療が普及した最近の報告では、5年生存率で50から60%と以前に比べ良くなってきています。

息切れがあり、また酸素を吸っていなければならないなど不便はあるものの、以前に比較してある程度延命は可能となってきましたので決して悲観する必要はありません。

しかし手術適応の患者さんでは、手術が成功すると、多くの患者さんが病気になる前とほぼ同じ程度の生活ができるほどまで症状が改善し、手術後もワルファリンの服用は続けなければならないという不便さはあるのですが、健康な人と同じくらいに長生きできることが知られています。

こうした点が積極的に手術をすすめる理由の1つではありますが、反面、病状が重いため手術を乗り越えられない患者さんや、血栓が肺の血管の奥の方に詰まっているため手術がうまくいかない患者さんもいることが問題であり、現在手術技術の改善や、手術適応に関してより正確に判定するような研究努力がすすめられています。

さらに、手術の適応がない患者さんに体する肺血管拡張薬の効果に対する研究もすすめられています。