・2.車内空気の汚染実態表1 101台の乗用車における空気中の化学物質の濃度
(μg/m3) 2004年5~10月、夏季に新車として登録 (2001年~2004年
の6~9月) された後通常の使用環境にある全て異なる国産車種101台を対象として車内空気の汚染実態を調査しました。
調査結果の一部を表1に示しました。
車内空気中より合計275種の化学物質が検出され、そのうちホルムアルデヒドおよび241種のVOCを全対象車について定量しました。
多種の脂肪族炭化水素類および芳香族炭化水素類のほか、ゴムやプラスチック製品が多用される車内に特徴的な物質も高濃度で検出されました。指針値の設定されている化学物質のうち定量した9物質の濃度の中央値は、いずれも指針値以下でした。
一方、定量されたVOCの合計濃度 (T-VOC241濃度) の中央値は約600μg/m3(最高値:約4,000μg/m3)であり、厚生労働省目標値の1.5倍でした。
対象車の80%におけるT-VOC241濃度が、この目標値を超えていました。
測定結果を統計学的に解析したところ、車内空気汚染の差異には車格や内装材等の仕様の違いが大きく関与し、皮革製シートが装備された車や新車価格の高い高級車において多くの化学物質の車内濃度が高値でした。
また、日常の換気も長期的な車内空気質に影響をおよぼすことが示唆されました。
さらに、1台の新車において行った上記1.の調査結果をもとに、対象車のうち芳香剤使用や車内喫煙のない50台について、各車の納車1ヶ月後(車内温湿度を32℃・45%と仮定)における車内化学物質濃度を算出したところ、車内空気は厚生労働省T-VOC目標値の約5~6倍濃度の化学物質により汚染されていることが推定されました。
3.低減化に向けた自動車産業界の取り組み 日本自動車工業会は、2005年2月、2007年度以降新車発売される乗用車について車内空気中化学物質濃度の低減化に取り組むことを発表しました。
しかし、その主対象は指針値のある13物質であり、T-VOCへの対応は考慮されていません。
本調査結果より、現状の車内においては空気中の全化学物質の合計濃度にも着目しなければならないことが示唆されました。自動車、内装部品、素材等の各メーカーにおける揮発性有機化合物濃度の総量低減化への取り組みが期待されます。
▼室内濃度指針値
一生涯その値以下の濃度の化学物質に曝露されたとしても、通常有害な健康影響がないであろうと判断される濃度
▼T-VOC 濃度の目標値
毒性学的な知見に基づいたものではなく、室内空気質の状態の目安として利用される濃度
暫定値:400 μg/m3
▼中央値
例えば、101 台の測定値を濃度順に並べた際、中央にある51 番目の値