・難病情報センターより
平成21年10月より、「原発性肺高血圧症」は「肺動脈性肺高血圧症」に疾患名が変更されました。
下記の解説は原発性肺高血圧症の内容となっておりますが、現在内容を見直しており、新しい内容を入手次第、更新させていただきます。
1. 原発性肺高血圧症(PPH)とは
原因不明の肺高血圧症を原発性肺高血圧症と言います。
心臓とか肺に病気があると肺高血圧といって肺動脈の血圧が高くなりますが、原発性肺高血圧症はこういった心臓とか肺の特別な病気がなくて肺動脈圧が高くなっていきます。
肺動脈圧は心臓カテーテル法を行なって測定されますが、肺動脈平均圧は正常者の安静臥位では15mmHgを超えないこと、また年齢を加味しても20mmHgを超えないことが知られています。
それで安静時の肺動脈平均圧が25mmHgを超えると肺高血圧症と診断されます。
原発性肺高血圧症の診断は、心臓とか肺の病気をすべて除外して、最後に残った肺高血圧症が原発性肺高血圧症ということになります。
実際には、心臓とか肺の機能検査を広く行なって診断します。とくに肺高血圧症の確定診断ができたあとは、慢性の血栓塞栓性肺高血圧症を除外するために、肺血流シンチグラムを行なう必要があります。
なお今日では、原発性肺高血圧症の診断は必ずしも心臓カテーテル検査を行なう必要はなく、カラードプラ法を含めた超音波心エコー法による検査を詳しく行なえば正しく診断できるようになりました。
2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか
人口100万当たり年間およそ1~2人の発症と考えられており、きわめて希な疾患です。
ちょっと古くなりますが、昭和50年度から昭和52年度の3年間にわたって行なわれた厚生省特定疾患「原発性肺高血圧症調査研究班」の疫学的調査では、昭和52年で131例の確実例が報告されています。
この時の調査では、原発性肺高血圧症の患者さんは、全国各地に均等に分布しており地域差はみられておりません。
原因の詳細は不明ですが、ヨーロッパでは食欲抑制薬の服用でこの病気が一時的に増えたことがありますが、わが国ではそのようなことは報告されておりません。
しかし、最近、食欲抑制薬などのわが国で承認されていない薬がインターネットを使って海外から輸入、販売されるケースが増えてきています。
この中には、肥満の治療薬であるフェンフルラミンという薬が含まれており、このフェンフルラミンという薬は1973年にアメリカで肥満症の人のための食欲抑制薬として承認されているのですが、3カ月以上の長期内服では、原発性肺高血圧症の発生率が23倍に増加することが知られてきています。
現在では、FDA(米国食品医薬品局)は1997年9月以降これらの薬剤の回収を発表し、発売を中止しました。
3. この病気はどのような人に多いのですか
原発性肺高血圧症は成人型と小児型があります。
成人原発性肺高血圧症の年齢分布と性差を図1に示しますが、26~35歳の30歳を中心にピークがみられます。
そして、この年齢では圧倒的に女性に多いことがわかります。
全体では、男:女比は1:2.6ですが、30歳前後の年齢では男:女比は1:10です。
如何なる理由で若年女性に多いのかは全くわかっていません。
また、60歳代の高齢では女性の原発性肺高血圧症が多い傾向がみられます。
これに対して男性では、とくに好発年齢というものはなく全年齢層にほぼ均等に分布しています。
小児を含めた若年では男性に多い傾向がみられます。小児と成人の比較では、表1に示すように、15歳未満の小児の原発性肺高血圧症は、男:女比は3:1で男性に多いことがわかります。
これは諸外国の報告と一致する成績です。
このように、原発性肺高血圧症は適齢期の女性を襲う疾患としてその対策がきわめて重要になってきています。