難治性肝炎のうち劇症肝炎 2 | 化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 電磁波過敏症 シックスクール問題を中心としたブログです

・4. この病気の原因はわかっているのですか
劇症肝炎は、肝炎ウイルスの感染,薬物アレルギー,自己免疫性肝炎などが原因で起こります。
  わが国では、B型肝炎ウイルスの感染によることが最も多く、全体の約40%を占めています。これには、B型肝炎ウイルスの保菌者(キャリア)が発症する場合と、キャリアから感染して発症する場合とがあります。また、最近ではB型肝炎に以前感染して直ったと考えられている既往感染例が、免疫を抑える薬や抗がん薬を投与した際に発症する場合もあることが明らかになってきました。A型肝炎ウイルスの感染によることもありますが、その発生頻度はA型肝炎ウイルス感染が流行する年によって異なります。C型肝炎ウイルス感染もその頻度はわずかですが劇症肝炎になる場合があります。また、ブタの内臓や野生動物の肉を生で食べるとE型肝炎ウイルスに感染する可能性がありますが、これが劇症肝炎の原因になる場合もあります。

B型肝炎ウイルス感染に次いで多いのは、成因が確定できないもので、全体の約30%を占めています。薬物アレルギーや自己免疫性肝炎が原因と確定したものは、何れも10%以下を占めるに過ぎません。しかし,成因の確定できない患者さんには、未知の肝炎ウイルスが感染して起こる場合以外に、薬物アレルギーや自己免疫性肝炎が原因のものが含まれている可能性があり、その実態を解明することが今後の課題です。また、A型やB型肝炎ウイルスが原因の場合には、急性肝炎と原因が同じなのにもかかわらず、なぜ一部の人で重症化して劇症肝炎になるのかは、わかっておりません。

5. この病気は遺伝するのですか
劇症肝炎は遺伝することはありません。しかし、B型肝炎ウイルスは母親が保菌者(キャリア)であると、出産時に感染した子供が保菌者になることがしばしば見られます。もし、親・兄弟または子供がB型肝炎ウイルス保菌者で発症した劇症肝炎とわかったら、念のためご自分にはウイルスが感染していないかを血液検査で見ておくことをお勧めします。

6. この病気ではどのような症状がおきますか
最初の症状としては、発熱、筋肉痛などの感冒様の症状、全身のだるさや食欲不振などが多く見られます。次いで,尿が濃褐色になるとともに黄疸が見られるようになります。最初の症状が軽度で黄疸により初めて病気に気づく場合もあります。
 急性肝炎では黄疸が出てからは全身のだるさなど最初の症状は軽くなりますが、劇症肝炎になっていく場合は、これが持続するか逆に悪くなり、やがて肝性脳症が現れます。

肝性脳症の程度は様々です。昼と夜の睡眠リズムの逆転、服装や姿勢が乱れていても無関心でいたりするなど、さらには、場所、人、時間などを間違えたり、興奮して暴れたりするようにもなります。重症になりますと,眠ったままで呼びかけや痛み刺激に反応しない状態(肝性昏睡)に陥ります。

劇症肝炎では、細菌の感染や腎臓、肺、心臓、消化管などの異常、血液凝固の異常など、全身の臓器に高頻度に障害が次第に起こります。そのため、発熱、呼吸困難、むくみ、下血、口腔内や注射針で刺した部位からの出血など、色々な症状が次々と現れることになります。

7. この病気にはどのような治療法がありますか
B 型肝炎ウイルスの感染が原因の場合は、エンテカビルなどの核酸アナログ製剤やインターフェロンを用いた抗ウイルス療法が最も有効です。また、自己免疫性肝炎や薬物アレルギーが原因の場合は副腎皮質ステロイドを大量に点滴するパルス療法を実施します。これらの治療を肝性脳症が現れる前から行うことにより,劇症肝炎への進行を抑えることができることもあります。

劇症肝炎となった場合には、原因の如何にかかわらず、肝臓の働きを補うための人工肝補助療法を行って、身体に必要な物質を補充し、老廃物を取り除きます。この治療法には,患者さんの血液から血球以外の成分(血漿)を取り除き,これを健康な人の血漿と交換する方法(血漿交換)と、腎臓が悪い患者さんで行われている血液透析を応用した方法(血液濾過透析)があります。通常は両方が併用されます。また、全身の臓器障害に対しても、適時に治療を行う必要があります。これらの治療により肝臓の機能が低下している期間を乗り切れると、肝臓が再生してくるので救命することが可能です。

しかし、劇症肝炎ではこのような治療によっても肝臓の機能が回復しないことがあり、その際は肝移植を行うことになります。脳死者からの肝臓を移植する場合と、近親者の肝臓の一部分を移植する場合(生体部分肝移植)がありますが、わが国では生体部分肝移植が広く行われております。従来、生体部分肝移植は主に小児に行われておりましたが、最近では成人でも積極的に行われるようになりました。