2)ヒスタミン性蕁麻疹
ヒスタミンが分泌され蕁麻疹が生じるが、必ずしもアレルギー反応によるものでない。
a)人工蕁麻疹
人工蕁麻疹は別名、機械的蕁麻疹とも言われる。機械的な刺激や、指で擦ったりした時にその刺激を受けた部位に一致してみみずばれに似た膨疹が生じる(隆起性皮膚描画症または隆起性デルモグラフィーとも言う)。ヒスタミンが放出されて膨疹が生じるが、抗原が体の中に入ったものではなく、アレルギー反応の関与は不明。人工蕁麻疹はある日突然出現する。例えば女性の場合妊娠出産の後に蕁麻疹が出ることが多く、妊娠出産という女性にとってはかなりの負荷が加わり、体質が変わったようである。大きな手術を受けた後、例えば虫垂炎手術後、胃全摘出術、帝王切開の後にも蕁麻疹が出やすい。男性の場合も暴飲暴食の後や、体調を崩した後に蕁麻疹が生じることが多い。
b)寒冷蕁麻疹
寒気、冷水にさらされた後にその暴露部位に膨疹が生じることをいう。診断方法は洗面器に水を入れ、片方の手を水の中に入れ、他方は外に出しておく。10分後コントロールに比べ水の中に入れた手に紅班、膨疹を認めれば寒冷蕁麻疹と診断する。日常の臨床では寒冷蕁麻疹を訴えてくる患者は見られるが実際にはさほど多くない。もし寒冷蕁麻疹と診断されたら冷水中で泳ぐことは危険である。また冷たい飲み物(ビール、ジュース、水)を一気に飲むと咽頭や喉頭に浮腫を生じ呼吸困難になりやすい。
c)日光蕁麻疹
日光照射後10ないし20分で照射部位に膨疹が生じるものを日光蕁麻疹という。膨疹は日光の当たった皮膚に限局して現れ、日光を避けると1から2時間くらいで痕跡を残さず消えていく。照射皮膚に光線が吸収されと、光のエネルギー作用で皮膚成分が修飾され構造が変化し光産物と呼ばれる。この光産物が抗原となって即時型アレルギー反応が成立すると言う考え方もある。日光蕁麻疹はいつも日光に当たっている顔面や手などではなく衣服で覆われている上腕,体幹に発症することがある。これは顔面、手などは持続的,慢性的に日光に暴露されtolerance(耐性)ができるからといわれる。日光蕁麻疹が全身及んだ場合は頭痛,意識混濁,ショック症状を呈することもある。日光蕁麻疹と似たものに多形日光疹というものがある。多形日光疹は日光照射後数時間してから発疹が現れ,発疹が数日間持続することで日光蕁麻疹と区別される。
3)コリン性蕁麻疹
発汗、運動、精神的緊張などで交感神経が刺激された後、直径1cm以下の膨疹が出来るのをコリン性蕁麻疹という。膨疹の周囲に紅班が見られ痒いというより痛痒いと言う感じである。夕方から夜にかけて出て、大脳皮質が休んでいる夜間には出ない。本症の発生機序はよくわかっていないが発汗刺激因子により、中脳の発熱中枢が刺激され、コリン性神経を介して皮膚の神経末端でアセチルコリンが分泌され膨疹が生じるといわれている。コリン性蕁麻疹はアセチルコリンに対して膨疹が生じる蕁麻疹であるが、ヒスタミンがどのように関与するかは報告者により異なる。汗の水分が皮脂と反応して中毒物質を生じ、これが吸収されて毛包周囲の肥満細胞からヒスタミンを遊離させるという説もある。以前から心因性蕁麻疹としてストレスによる蕁麻疹があるが、多くはアセチルコリンが関与している
4)クィンケの浮腫
クィンケの浮腫は血管性浮腫(Angioedema)とも呼ばれ、ヒスタミンの他にセロトニン、その他血管作動性ペプチッドが作用して浮腫が出来る。クィンケの浮腫は蕁麻疹と同じアレルギー機序が考えられているが、蕁麻疹(真皮上層)とは違ってより深い真皮から皮下組織に浮腫が生じる。従って臨床的には顔瞼、口唇、頬などが限局性に腫脹するのが特徴で、熱感、瘙痒を伴う。咽頭粘膜や喉頭粘膜に浮腫が発生すると呼吸困難をきたすことがある。限局性の浮腫は数時間から数日持続する。クィンケの浮腫には前駆症状として食欲不振、胃腸障害、頭痛などが認められ、ただ単なる抗原―抗体反応だけでは説明がつかない事が多い。原因はよくわかっていないが薬剤、特にペニシリン系薬剤が関係しているといわれる。