3)治療法
アトピー性皮膚炎の治療法は、炎症、バリア機能の低下および瘙痒に対していろいろな薬物療法が行われる。
同時にアトピー性皮膚炎の原因・増悪因子を追求し、心身医学的治療や生活指導を行うことも大切である。
炎症に対してはステロイド外用療法が、バリア機能の低下に対しては保湿剤によるスキンケアが行なわれる。瘙痒に対しては抗ヒスタミン薬を服用し、外的刺激やアレルゲン、ストレスなどを減らすよう日常生活を改める。
a)薬物療法
アトピー性皮膚炎は遺伝的素因も含んだ多病因性の疾患であり、重症例においては疾患そのものを完治させうる治療法は確立されていない。
ⅰ)ステロイド外用剤
炎症を鎮静化させるためステロイド外用剤が使用されるが、必要以上に強いステロイド外用剤を選択してはならない。
個々の皮疹の重症度に応じて、ステロイド外用剤の種類を選び、漫然と使用しない。
乳幼児・小児では、成人の場合よりも1ランク低い外用剤を使うのがよい。また、ステロイドを含まない外用剤(ワセリン、尿素軟膏、ヘパリン類似物質含有軟膏、亜鉛華軟膏など)を併用するようにする。
ステロイド外用剤の使用による皮疹の改善と中止による再発を繰り返すうちに,患者が不信感を持ち,ステロイド外用剤に嫌悪感を募らせることも少なくない。
ステロイド外用剤は基剤の違いを理解し、軟膏、クリーム、ローション、テープ剤をケースバイケースで用いる
。軟膏は痂皮、びらんなどを含めて適応範囲が広いが、べたつく。クリーム剤はベタツキが少ないが、皮膚を乾燥させるので、冬季は避けたい。ローションは有毛部の病変に適している。テープ剤は苔癬化病変や亀裂性病変などに適している。
外用回数は状態がよければ1日1回でよい。副作用を予防するためにも1日5~10g程度ステロイド外用剤を続けて30日以上使用することは避けるべきである。ステロイド外用剤の副作用として、ステロイド痙瘡、ステロイド潮紅、皮膚萎縮、多毛、細菌・真菌・ウイルス皮膚感染症などがある。
なお、顔面は酒サ様皮膚炎などの副作用が出やすいので、ステロイド軟膏は使用しないでタクロリスム軟膏が好ましい。
ⅱ)内服療法
痒み止めとして抗ヒスタミン剤を服用するが、ステロイド剤の内服に関しては否定的な意見が多い。
私は重症の成人アトピー性皮膚炎に対しては短期間のステロイド剤内服がよいと考える。
一時的ではあるが炎症が抑えられ皮疹が改善し、バリア機能が回復すれば、精神的にも落ち着き、ステロイド軟膏の使用も減り、スキンケアの改善が期待できる。
アトピー性皮膚炎の患者は医師にたいする不信感(対症療法への不満)が強くステロイド外用剤のみならず,他の内服薬や注射による治療も嫌がる傾向がある。一時的にせよ内服により皮膚炎がよくなる事を示してやることが大切で、ステロイド軟膏を減らして保湿剤などのスキンケア、抗ヒスタミン剤などで治療しましょうと納得させるのがベターと思う。
短期間の内服では副作用もなく、リバウンドもない。
b)バリア機能の低下に対するスキンケア
乾燥およびバリア機能の低下に対して、保湿剤などでスキンケアを行う。保湿剤としては、保湿作用を有する尿素軟膏、ヘパリン類似物質含有製剤(ヒルドイドソフトクリーム)や皮膚の保護を目的とする白色ワセリン、ビタミンA含有軟膏(ザーネ軟膏)などがある。
非ステロイド系消炎剤の外用剤(NSAID外用剤)は、保湿剤としてではなく顔面や炎症の程度が軽度な場合に用いられるが、抗炎症作用は弱く、逆に接触皮膚炎を生じることもある。
以上のように、薬物療法としては、①ステロイド外用剤、②抗ヒスタミン薬、③保湿剤の外用を組み合わせる。