4)環境改善と生活指導
a)原因、増悪因子
特異的アレルゲンとして乳幼児では、食事アレルゲンの関与がある程度みられる。それ以降ではダニ、ハウスダストなどが関与していることもある。アトピー性皮膚炎は多因子疾患でありアレルゲンが明らかになった場合でも、その除去は補助療法であり、これのみで完治できるわけではない。行き過ぎた除去療法が、かえって害をもたらすことも少なくない。化粧品、ヘアスプレー、衣類、その他、日常生活で痒みを助長させるものはなるべく避けるようにする。
b)心身医学的側面
アトピー性皮膚炎の重症例、とくに成人重症例では、人間関係、多忙、失業、進路に対する葛藤、受験、失恋、自立不安など心理社会的ストレスが関与することが多い。ストレスからの逃避行為として嗜癖的または依存症とも呼ぶべき掻破が行われ、自ら皮疹の悪化をもたらす。この掻破行動は、痒みによるものの他に、ストレスからの逃れようとして、無自覚に行われており、掻くことに快感を覚えることもある。また、小児でも愛情の欲求が満たされない不満から、同様の掻破行動がみられる場合がある。
c)生活指導
皮膚の乾燥を防ぎ、皮膚を清潔に保つスキンケアを中心とした生活指導を行う。皮膚が乾燥すると、痒みを感じる知覚神経終末が表皮内に上行してくるため、皮膚の乾燥は、痒み一掻破サイクルの誘因になりうる。
以下のような点に留意して生活指導を行うとよい。
入浴、シャワーにより皮膚を清潔に保ち、洗浄力の強い石鹸を避け、ゴシゴシこすりすぎない事、その直後には皮膚の乾燥を防ぐ保湿剤を塗ること。
下着は(刺激の少ない保湿性の高い)木綿製のやわらかい肌着を使用するとよい。
爪は短く切り、なるべく掻かないようにすると同時にシャンプーや化粧品など皮膚と接触するものについても気をつける。
規則正しい生活を送り、暴飲・暴食は避ける。食事ではリノール酸の多い食べ物を控えること。
アトピービジネス、民間療法などに注意する。