4)ウィルス感染
インフルエンザウィルスはシアル酸を持つ上気道と呼吸器の上皮細胞に感染する。そしてウィルスは、球の表面に千手観音の手のように突き出たHA(赤血球凝集素)が上皮細胞内のシアル酸誘導体と結合し、その細胞内に入り込む。そしてRNAがコピーされ細胞中で活発に増殖し短時間のうちに多数のウィルスを作る。そしてウィルスはNA(ノイラミニダーゼ)という酵素を使って感染細胞のシアル酸を切り細胞外に遊離する。このようにインフルエンザウィルスは細胞から細胞へ感染、伝播していくためにはウィルス表面に存在するノイラミニダーゼの作用が不可欠である。
5)抗ウィルス薬
1993年、オーストラリアのフォン・イツスタイン博士が、シアル酸を切るノイラミニダーゼの構造をコンピューターで、解析し、酵素を不活性にする薬剤を開発した(リン酸オセルタミビル)。この酵素阻害剤を微粉末として直接気道から吸入すると、インフルエンザウィルスの持つ「伝家の宝刀」が切れなくなり、侵入した細胞内に閉じ込められて、他の細胞への感染が防御され、増殖が抑えられことを見つけた。すなわちリン酸オセタミビルはウィルスのもつノイラミニダーゼ作用を阻害することにより、細胞内で感染増殖したウィルスが細胞外に出ることが出来なくなり抗ウィルス作用を示す。ただし、リン酸オセタミビルはウィルスが極端に増殖した後は効かないので、発症後48時間以内の早期投与が望ましい。このノイラミニダーゼはA型、B型のインフルエンザウィルスに含まれるので、リン酸オセタミビルはA型とB型の両方のインフルエンザ感染に効果がある。