酒井医院のホームページ
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1)臨床像
一般的な臨床像は1~4日の潜伏期間があり、発熱とともに咳嗽、頭痛、筋肉痛、倦怠感が現れ、それらの症状が3~4日間続く。高熱は、マクロファージが放出するサイトカイン(インターロイキン1)よるもので、これが脳の発熱中枢に作用して熱が出る。発熱は免疫反応を活発にする助けにもなっているので、むやみに解熱しないほうがよい場合もある。重症化すると、乳幼児ではインフルエンザ脳症、年配者や心肺疾患をもつ患者では肺炎になりやすい。インフルエンザの恐ろしさは、その猛烈な感染力による。1918(大正7)年から流行したいわゆるスペイン風邪では、全世界で6億人の感染者と、2300万人の死者を出し、日本でも38万人を超える人が亡くなった。
2)インフルエンザウィルス
インフルエンザウィルスは、直径一万分の一ミリメートルのたんぱく質に囲まれた球である。内部に8本のRNA(リボ核酸=遺伝情報を伝える物質)を持ち、タンパク質の違いからA型、B型、C型の3つのタイプがある。このうち、世界規模の大流行を起こし、重症のインフルエンザを起こすのはA型である。球の外側には赤血球凝集素(HA)とノイラミニダーゼ(NA)という、二種類のたんぱく質からなるスパイクが出ている。
3)ウィルスの抗原性の変異
ウィルスが宿主細胞に入ると、たんぱく質の殻が分解され、RNAが細胞内に放たれたれる。宿主細胞内でRNAが大量に複製されウィルスの情報を伝え、たんぱく質を合成し、これらが組み合わせられて新しいウィルスが誕生する。しかしインフルエンザウィルスのRNAは一本鎖で、人間の遺伝子のような二本鎖のDNAよりも不安定であるので、変異を起こし自分のRNAを複製する際に“コピーミス”を起こしやすい。さらにインフルエンザウィルスは、他の多くのウィルスと異なり、人だけでなく、鳥類や豚に感染してからもRNAの変化が起きるので、8本のRNAのいずれかがコピーミスを起こすと、A型のHAスパイクの形も変化し抗原性が少しずつ変異する。中国の一部では、アヒル、鶏、豚などが一緒に飼われており、そこで鳥類に感染するウィルスと、人に感染するウィルスが、ともに豚に感染すると、そこでインフルエンザウィルスの型が変わると、新型ウィルスが現れる。10数年の周期で新型ウィルスが出現して、世界中に大流行を起こす。