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3)発生源を推定する
1),2)の状況が処置で改善されれば問題はないが、それでもなお臭いが気になったり、目に刺激を感じたり、体調不良があったりした場合には、原因物質の発生量を減少させるか、発生した物質を取り除くかする必要がある。それには物質や発生源の把握が重要である。
まずは体調不良を感じるようになったきっかけを確認する。改修を行った、新たな家具等を購入した、壁紙を張り替えた、防蟻処理を行った等、特定の変化後に起こったということであればそこに注目することになる。また、家の中の特定部分でより強い臭いや刺激を感じる等の事があればその部分に注目することになる。臭いや刺激に何らかの特徴があれば*原因物質を推定し、さらにはその発生源を推定できる可能性もある。
*特徴的臭い
工場・事業所から発生する悪臭について、「悪臭防止法」が制定されている。現在22物質が制定されているが、この中には現在、室内空気汚染物質として取り上げられているものが含まれている。これによるとそれぞれの物質の臭いは以下のように表現できる。
アンモニア :し尿のような臭い
メチルメルカプタン :腐ったタマネギのような臭い
硫化水素 :腐った卵のような臭い
硫化メチル :腐ったキャベツのような臭い
二硫化メチル :腐ったキャベツのような臭い
トリメチルアミン :腐った魚のような臭い
アセトアルデヒド :刺激的な青臭い臭い
プロピオンアルデヒド :刺激的な甘酸っぱい焦げた臭い
ノルマルブチルアルデヒド :刺激的な甘酸っぱい焦げた臭い
イソブチルアルデヒド :刺激的な甘酸っぱい焦げた臭い
ノルマルバレルアルデヒド :むせるような甘酸っぱい焦げた臭い
イソバレルアルデヒド :むせるような甘酸っぱい焦げた臭い
イソブタノール :刺激的な発酵した臭い
酢酸エチル :刺激的なシンナーのような臭い
メチルイソブチルケトン :刺激的なシンナーのような臭い
トルエン :ガソリンのような臭い ※
スチレン :都市ガスのような臭い ※
キシレン :ガソリンのような臭い ※
プロピオン酸 :刺激的な酸っぱい臭い
ノルマル酢酸 :汗くさい臭い
ノルマル吉草酸 :むれた靴下のような臭い
イソ吉草酸 :むれた靴下のような臭い
濃度が薄いと必ずしもこのようには感じられないと思われるが、主要汚染化学物質の推定に役立つ可能性はある。
※H13.6 現在で指針値が策定されているもの。
家具等、原因が容易に移動できるものであればこれをその室内より除去してしまうのが有効である。もしくは化学物質の吸着剤等を使用してもよい。壁紙等が疑われるなら、張り替えが有効であろう。この際には化学物質の放散量基準(5.参照)が壁装材料協会、壁紙製品規格協議会等から提案されているので、必要ならそれら機関にも相談して要望にあったものを入手するよう勧めるとよい。なお、この場合適切な施工にも注意が必要である。
建材や防蟻剤等が原因と推定された場合は、上記のような発生源の移動等による除去は困難なので、各種吸着剤、分解剤、封じ込め剤や空気清浄機等の利用、さらにはベークアウト*やリフォーム等の処置が必要かも知れない。**