3)いわゆる抗アレルギー薬と呼ばれるもの
以前から、皮膚科では湿疹・皮膚炎群の痒み止めとしてポララミン、タベジールなどのいわゆる古典的抗ヒスタミン剤(I型アレルギー反応の第III相を拮抗する)が使われてきた。その後、インタール、リザベンなど第II相のケミカルメディエター遊離を抑制する新しいアレルギー用薬が発売された。
インタールは消化管から吸収されないため、点眼、点鼻、吸入薬として気管支喘息、アレルギー性鼻炎の治療薬として用いられている。
リザベンは本邦で開発された薬剤で経口投与が可能であった。発売当初は体質改善薬といわれ、抗アレルギー作用によりアトピー性皮膚炎や喘息などの患者が長期間(2~3年くらい)服用すれば体質改善が可能であると宣伝したため抗アレルギー薬と呼ばれた。
しかし、長期服用にもかかわらず体質改善効果はなく、抗ヒスタミン作用がないので、湿疹・皮膚炎群の痒み止めとしても使われなくなった。
最近ではIL-1の産生抑制を期待して肥厚性瘢痕の予防薬といわれるが、実際の効果は不明である。
リザベンのような抗ヒスタミン作用がない薬は痒みの強い皮膚疾患に使えないため、ケミカルメディエター遊離抑制作用と抗ヒスタミン作用を併せ持つザジデンが発売された。
以後、ケミカルメディエター遊離作用のわずかの違いで、セルテクト、アゼプチン、セルテクトなど多くの薬が発売された。
しかしザジテン以降に発売された薬も作用の主体が抗ヒスタミン作用であり、第二世代抗ヒスタミン薬と呼んだほうがよい。
これらのアレルギー用薬にも眠気・倦怠感があることがわかり、最近では眠気の少ない薬という名目でダレン、アレジオン、エバステル、ジルテック、アレグラなどが出てきた。この中ではアレグラが最も眠気が少ない。
抗アレルギー薬の治療効果が古典的抗ヒスタミン薬(ポララミン、タベジールなど)と較べほとんど変わらない(有用度は70~80%くらい)ようである。
しかも眠気が少ないといわれる薬剤でもかなりの患者が眠気を訴えている。蕁麻疹の治療には、第一世代の抗ヒスタミン薬のほうが効果がある。花粉症の治療でもくしゃみ、鼻水、流涙などの症状を早く止めるには第一世代の抗ヒスタミン薬がよい。
第二世代抗ヒスタミン薬(抗アレルギー薬)は効果発現までに5~7日、ピークにまで達するには約4週間を要する。
わが国では古典的抗ヒスタミン剤と較べてさほど治療効果が違わないアレルギー用薬が抗アレルギー薬と称して、次から次へと開発・発売されている。
理由として二つある。一つは薬価が高いこと。例えば、第一世代抗ヒスタミン薬であるポララミン(6mg)は11.3円、タベジールは11.1円であるのに対し、第二世代抗ヒスタミン薬であるザジテンは86.3円、エバステルは5mgが130.2円、10mgが186.4円、ジルテックは5mgが131.8円、10mgが186.4円である。第二世代抗ヒスタミン薬が約8倍から17倍も高価である。また、ケミカルメディエターの遊離抑制作用がはっきりしないにもかかわらず、抗アレルギー薬といういかにもアレルギーを抑えることが出来そうな感じがあるので、多くの臨床医が処方したようである。
欧米では抗ヒスタミン薬で一括され抗アレルギー薬という名前は使われていない。また厚生省で出している薬価基準でもザジテン、ジルテックなど全てがアレルギー用薬として分類されている。抗アレルギー薬という名前はどこにもない