3)生活習慣の変化
a)アレルゲンの増加
戦後、わが国でアレルギー患者が増えたのは環境が変わってアレルゲンが増えたためであると考えられている。
年代別発症度を見てみると花粉症は年齢を増すにつれ患者数が増えており、花粉の増加も原因の一つである。
喘息、アトピー性皮膚炎は成長とともに減少する。
ただし、アトピー性皮膚炎は思春期になるとストレスが原因で増悪するが、アレルゲンが増えたわけではない。
喘息も同じで、幼児に多く発症するが、その後減少し、老人になると増えていく。これもアレルゲンが増えたというより、環境汚染が関係するようだ。このようにアレルギー疾患の年代別発症度からみると、ただ単にアレルゲンの増加だけでは説明がつかないことも多い。
b)細菌感染の減少
わが国を含め先進国でアレルギー疾患が増加しているのは、予防注射や抗生物質の開発によりTh1細胞への分化を誘導するウィルス感染や細菌感染の減少が原因と思われる。
細菌感染に対して多量の抗菌薬が使われと抗体が十分に出来ないまま治癒したり、ワクチン接種によりウィルス感染が減少すると、免疫機構が充分に働かない(Th1細胞が減少し、Th2細胞が増加する)。
好酸球は寄生虫や微生物感染に際して、アレルギー反応を抑制すると考えられていたが、現在は寄生虫感染が減少し、I型アレルギー反応の際、好酸球炎を惹き起こしアレルギー反応を悪化させている。最近のように退治する細菌やウィルスがいなくなれば、免疫機構が変化した可能性があり、通常はほとんど無害であるダニやスギ花粉などに対して抗体を作りやすくなった。
c)六系脂肪酸(リノール酸)の過剰摂取
現在の食事スタイルで間違っている最も大きな問題は、植物性脂肪酸である六系のリノール酸(ベニバナ油など)を多く摂っていることで、リノール酸は生活習慣病やアレルギーを促進することがわかってきた。
アトピー性皮膚炎や花粉症の患者が増えているのは、戦後の食生活で動物性食品と乳製品、それとリノール酸系油脂をを多く摂取したためと考えられる。リノール酸はアラキドン酸に変換され、細胞膜の構成成分となる。
アラキドン酸は過剰になると血圧を上げ、血液凝固を促進し、I型アレルギー反応の際に、好酸球や肥満細胞の細胞膜(アラキドン酸)からロイコトリエン(LTA4)などの起炎物質が作られ、アレルギー性炎症を促進する。なお、気炎物質の産生を抑制するのが、三系脂肪酸であるα―リノレン酸(シソ油、エゴマ油)、EPA(魚油)、DHA(魚油)である。
4)まとめ
戦後社会における行き過ぎた清潔志向、あらゆる細菌を寄せ付けない風潮が問題である。一般には細菌は減らせばよいのであってすべて除菌する必要はない。
そのあとは人間の生体防御機構で闘うことによりいろいろ抗体が出来る。今後は私たちの生活では、インターロイキン12(IL-12)の分泌を促進して、INF-γを増やし、IgE抗体の産生を抑えるように務めるべきである。
食事では全体的に脂肪の摂取を減らし、特にリノール酸、アラキドン酸が多く含まれる植物油と、それから作られるマーガリン、マヨネーズ、ドレッシングなどを減らすことが望ましい。
そして、三系脂肪酸が多く含まれる魚介類、野菜類を増やし、気炎物質の産生を抑制すると、アレルギー反応を抑えることが出来る。
ストレスを減らすためにはまずストレスの原因を考え、同時に自分には現在ストレスがあると認識すること。
問題を抱えているのは自分だけではないと仕事や職場から少し距離おくとよい。自分自身でどこまで対処できるのかを自覚し、頑張りすぎないことも大切である。