東京衛研年報より6 | 化学物質過敏症 runのブログ

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4.4.可塑剤・難燃剤等
可塑剤はプラスチックを柔らかくするための添加剤でフタル酸エステルやアジピン酸エステル,リン酸トリエステル等が使用されている.

什器類の表面塗装にも可塑剤が含まれている.

難燃剤はプラスチック,合成ゴム,繊維,紙等,さまざまな素材を燃えにくくするための添加剤でテレビ,パソコン,カーペット,カーテン,壁紙等に臭素系,塩素系,リン系,無機系難燃剤が使用されている.

これらの物質は比較的蒸気圧が低いため,ホルムアルデヒドやVOCのように室内空気を高濃度に汚染することは少ない.

しかし,中には内分泌かく乱作用,化学物質過敏症との関連,さらには発ガン性が疑われる物質があり,低濃度であっても注意深く監視する必要があるフタル酸エステルのうち.生産量が多いのはフタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP,1998年の生産量26万t)だが,室内濃度は生産量がDEHPの約1/20と少ないフタル酸ジブチル(DBP)の方が高濃度であった25).

これはDBPの蒸気圧がDEHPのそれの約300倍高いことに起因すると考えられる25).フタル酸エステルの放散量も温度の影響を受け26),夏季に高く冬季に低い結果が得られている25) .

また,存在形態に関する研究では,低分子量のフタル酸ジメチルは大部分がガス状物質として,高分子量のDEHPは大部分が粒子状物質として捕集されていた25) .中間のフタル酸ジエチル,DBP,フタル酸ブチルベンジルは室温によってガス状/粒子状の割合が変化するという結果が得られている25) .
以上の結果はフタル酸エステルの室内汚染の機構を考える上で非常に重要である.

VOCの場合には内装材表面から気化した分子が,自然拡散し,やがて気流に乗って室内に拡散していくと考えられている.

粒子状物質として存在するフタル酸エステルの場合について,著者ら27)は内装材表面付近での微細な塵埃への吸着を介した拡散機構を提案している.

蒸気圧が極めて低い物質,例えばDEHPのような物質も材料内部では拡散運動をしており,表面付近に内部から滲み出てくる.

この時,塵埃が表面に接触していれば材料内部DEHPが浸透する.この移動現象はFickの法則に従うことがモデル実験によって確認されている27).

さらに,表面付近の領域では再吸着も頻繁に起こるため近くに塵埃があれば一旦気化したDEHPが塵埃表面に吸着しやすくなる.

DEHPを吸着した塵埃が気流により再び内装材表面から離れ,空気中を自由運動するという考え方である.リン酸トリエステル類のうち.室内空気中から高頻度に検出された(検出率50%以上)のはリン酸トリエチル,リン酸トリブチル,リン酸トリス(2-クロロエチル),リン酸トリス(2-クロロイソプロピル)及びリン酸トリフェニルの6種であった28).

このうち,リン酸トリス(2-クロロイソプロピル)の住宅室内空気中濃度は最高で14 μg/m3に達した.この他,アジピン酸エステル,ビスフェノールA 29),酸化防止剤トリスノニルフェニルホスファイトが起源と考えられるノニルフェノール30)が室内から検出されている.

また,Rudelら31)は,内分泌かく乱作用や発ガンに関連する農薬,フタル酸エステル,アジピン酸エステル,多環芳香族炭化水素,フェノール類を室内空気やハウスダスト中から検出している.

この他,テトラブロモビスフェノールA,ボリブロモビフェニル,ポリブロモビフェニルエーテル等の臭素系難燃剤による海洋や生物等広範な環境への汚染の増加、さらにはヒトへの影響が懸念される32)ことから,これらの発生源が多く存在している室内環境における汚染実態についても明らかにしていく必要がある