4.3.殺虫剤
住宅においては害虫駆除,シロアリ防除,畳の防虫等の目的で様々な殺虫剤が使用されている.
2000年度に住宅及びビルの室内空気中有機リン系殺虫剤の調査18)を行ったところ,調査対象物質9種類のうち住宅,ビルの両方から検出されたのは,ジクロルボス(DDVP),ダイアジノン,フェニトロチオンの3種でクロルピリホスは住宅からのみ検出された.
ジクロフェンチオン,クロルピリホスメチル,メチルパラチオン,マラチオン,ピリダフェンチオンは検出されなかった.
注目されるのは, ビルにおけるDDVP,ダイアジノン,フェニトロチオン濃度(各最大値130,52.3,1,480μg/m3,n=54)が住宅における濃度(各最大値18.1,3.3,51.3 μg/m3,n=82)よりも高い傾向がみられたことである18).これは,ビルは「建築物の衛生的環境の確保に関する法律」(ビル衛生管理法)により,昆虫等の駆除が義務付けられ定期的な殺虫剤散布が行われているためと考えられている18).
クロルピリホスや共力剤S-421(オクタクロロプロピルエーテル)によるシロアリ防除処理をした住宅での追跡調査において,これらの薬剤の室内空気中濃度は5年間にわたり,あまり減少しないことが報告されている19).
季節的には気温が高くなる夏季に室内濃度が上昇する20).
ペルメトリンによるシロアリ防除をした家屋や燻煙処理をした室内ではハウスダスト中にペルメトリンが長期間高濃度で残留する21).
また,ペルメトリンを含む家庭用エアゾール殺虫剤を25.4 m3の室内(6畳間に相当)で5秒間噴霧すると最高64 μg/m3となった22).現在,クロルピリホスとダイアジノン以外の殺虫剤には室内空気中濃度指針値が設定されてない.
しかし,有機リン系殺虫剤は化学物質過敏症との関連23)が,またペルメトリンには内分泌かく乱作用が指摘24)されていることから,これらの薬剤による汚染実態と健康影響を的確に把握しておくとともに,居住者が適切な使用をするよう配慮する必要がある.