東京衛研年報より4 | 化学物質過敏症 runのブログ

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4.室内空気汚染の現状
4.1. ホルムアルデヒド
ホルムアルデヒドは化学式HCHO,分子量30.03,沸点-20℃の無色で刺激臭のある水溶性の可燃性気体である.極めて反応性が強く化学工業材料として重要でユリア(尿素)樹脂,メラミン樹脂,フェノール樹脂等の合成樹脂や接着剤の原料となるほか,防腐剤や繊維製品中の樹脂加工剤としても使用されている.ホルムアルデヒドの約37%水溶液はホルマリンと呼ばれている.
2000年から2001年まで,都内の住宅を対象にした調査の
結果を他のVOCとともに表5に示した.指針値を超えた住宅は5.8%であり,199年から1999年までの統計データ9)による17.6%に比べ減少した.室内空気中のホルムアルデヒドの指針値が設定された1997年以降は,高濃度検出例が減少し,現在では指針値を超える新築住宅はほとんど無くなった.
国土交通省が主導する室内空気対策研究会が,2000年度実施した全国約4,500戸を対象とした空気環境調査によれば,ホルムアルデヒド濃度の平均は0.071 ppm(89 μg/m3)で,全体の27.3%(1,224戸)で指針値を超過してい11).指針値超過率は著者らの調査9)よりもかなり高いが,これは調査地域の違いや築年数が比較的新しい住宅を測定対象とするなど,著者らの調査とは母集団が異なるためであろう.
グループ
環状アルカンメチルシクロペンタン, シクロヘキサン, メチルシクロヘキサン
テルペン3-カレン, α-ピネン, β-ピネン, リモネン
アルコール2-プロパノール, 1-ブタノール, 2-エチル-1-ヘキサノール
酸ヘキサン酸
その他2-ペンチルフラン, テトラヒドロフラン
酢酸エチル, 酢酸ブチル, 酢酸イソプロピル, 酢酸2-エトキシエチ
ル, ヘキサノールイソブチレート
エステル
化合物名
メチルエチルケトン, メチルイソブチルケトン, シクロヘキサノン,
アセトフェノン
ケトン
トリクロロエチレン, テトラクロロエチレン, 1,1,1-トリクロロエタ
ン, 1,4-ジクロロベンゼン
ハロゲン化炭化水素
2-メトキシエタノール, 2-エトキシエタノール, 2-ブトキシエタノー
ル, 1-メトキシ-2-プロパノール, 2-ブトキシエトキシエタノール
グリコール/グリコール
エーテル
ブタナール, ペンタナール, ヘキサナール, ノナナール, ベンズア
ルデヒド
アルデヒド
ベンゼン, トルエン, エチルベンゼン, キシレン, プロピルベンゼ
ン, 1,2,4-トリメチルベンゼン, 1,3,5-トリメチルベンゼン, 2-エチ
ルトルエン, スチレン, ナフタレン, 4-フェニルシクロヘキセン
芳香族炭化水素
ヘキサン, ヘプタン, オクタン, ノナン, デカン, ウンデカン,
ドデカン, トリデカン, テトラデカン, ペンタデカン, ヘキサデカ
ン, 2-メチルペンタン, 3-メチルペンタン, 1-オクテン,1-デセン
脂肪族炭化水素
表4. TVOCの計算に用いるVOCリスト8)
東 京 衛 研 年 報 53, 2002 183
最近,合板等の市場はFC0やE0等の低濃度ホルムアルデヒド製品に急速にシフトしている12).接着剤や塗料についてもノンホルムアルデヒド製品が主体となっている.
高濃度のホルムアルデヒドを放散する合板等を用いて建設された住宅では,室内汚染が長期間にもわたることが知られている13).その理由は,特にユリア・ホルムアルデヒド樹脂では空気中の水分や酸素などによって合成時と逆の分解反応が進み,徐々にホルムアルデヒドを放出するためである14).
合板からのホルムアルデヒドの放散速度は温度及び湿度が高くなるほど大きくなる. 実際,ホルムアルデヒドの室内空気中濃度は夏季に高く,冬季に低くなる傾向がある13).厚生労働省のホルムアルデヒド測定マニュアルでは,室温が20℃に満たない場合には濃度補正することを推奨している.

温度, 湿度,換気補正後のデータ,6ヶ月以内新築住宅.
4.2.VOC
住宅室内空気中の濃度が高いVOCはトルエン,キシレン,エチルベンゼン,トリメチルベンゼン,パラジクロロベンゼン,デカン,トリデカン,ノナナール,リモネン,α-ピネンなどである7).
一般に建材等に含まれるホルムアルデヒドが徐放性なのに対して,VOCは比較的速やかに放散する16) .実際の調査においても新築住宅のVOC濃度は,当初高濃度だが築後急速に低下する.例えば,トルエンは1.5ヶ月で1/2に,6ヶ月で温度,湿度,換気補正後のデータ,6ヶ月以内新築住宅.1/10以下に低下していた13).トルエンは溶剤として汎用されており,室内空気中に存在するVOCの代表的な物質である.