b)発症要因
a)花粉症は戦後に患者数が増え、10年ごとに20-50%の割合で増加している。2月から4月にかけてスギ林に近い住民の約20%、大都市住民でも10%くらいがスギ花粉症に罹患し国民病の様相を呈する。
近頃は新聞、テレビで花粉症情報がアナウンスされ、多くの花粉症グッズも販売されている。
戦中・戦後に沢山のスギが植林され、そのまま伐採されないので、多量の花粉が飛散することが原因と考えられている。
ジーゼルエンジンの排気ガスに含まれる微粒子が鼻や目の粘膜の過敏性を増加させたという考え方もある。
b)気管支喘息はこの20~30年の間に0.5-1%から3-4%に増えた。
乳児期の喘鳴(ゼーゼーいうこと)は大部分が喘息様気管支炎で、猫の毛、そば殻、ハウスダストなどが原因の小児喘息はそれほど多くない。
成長するに従い患者は減るが、高齢になるにつれて増加する。高齢者の喘息は喫煙、大気汚染、ジーゼルエンジンの排気ガスに含まれる微粒子などが悪化要因となる。
c)乳児アトピー性皮膚炎は母親からのホルモンの影響で乳児脂漏が目立つ。痒みがあり、掻きこわすので、ジクジクしてとびひのようで治りにくい(免疫不全を思わせる)。成長するにつれて、アトピー患者は減少するが、ドライスキンの人は皮膚炎が続く。
卵、牛乳に対するIgE抗体が認められるが、3歳ぐらいになると、卵、牛乳に対する抗体が減り、ダニに対するIgE抗体が増える。
ダニに対する抗体は喘息、アレルギー性鼻炎の原因でもある。経験的にはアトピーが悪化すれば喘息は軽快し、アトピー症状がよくなれば喘息は悪化する。アトピー性皮膚炎は食餌の欧米化、家ダニの増加、ストレスなども増悪因子となる。
2)免疫機序の変化
ウィルス感染や細菌感染では単球・マクロファージが反応し、マクロファージからインターロイキン12(IL-12)が分泌される。そのIL-12はTh1細胞に作用してINF-γを産生し、Th2細胞からのIL-4、IL-5の分泌を抑える。
なお、形質細胞が反応する場合は、IgG抗体が作られ免疫の働きをする。健常人はTh1細胞とTh2細胞のバランスが保たれているが、アレルギー患者はTh2細胞へ分化しやすい(Th1/Th2細胞のアンバランス)素因を持つ。
すなわちダニ、スギなどが感作Tリンパ球に作用すると、Th1(T helper-1)細胞ではなくTh2(T helper-2)細胞からインターロイキン4(IL-4、IgE抗体が作られる)とIL-5(好酸球を浸潤させる)が分泌される