5)アトピー素因について
単球・マクロファージがウィルス感染や細菌感染に反応すると、インターロイキン12(IL-12)を分泌するが、そのIL-12はTh1細胞に作用してINF-γを産生する(形質細胞が反応する場合は、IgG抗体が作られ、免疫に関与する)。
そのINF-γはウィルス感染を防御すると同時にTh2細胞からのIL-4、IL-5の分泌を抑える働きをする。健常人はTh1細胞とTh2細胞のバランスが保たれているが、アレルギー患者ではダニ、スギなどがT細胞を刺激すると、INF-γを代表とするTh1タイプのサイトカインではなく、IL-4、IL-5などのTh2タイプのサイトカインを産生する。すなわちアレルギー反応の第I相で感作Tリンパ球がTh1(T helper-1)とTh2(T helper-2)細胞に分化する際、Th2細胞からインターロイキン4(IL-4、IgE抗体を作る)とIL-5(好酸球を浸潤させる)が分泌される。このようにアレルギー患者はTh2細胞へ分化しやすい(Th1/Th2細胞のアンバランス)素因といえる。
遺伝的素因を持ったヒトに発症するIgEを介して惹き起こされる疾患をアトピーと呼び、アトピー素因を持つ人は家ダニや花粉といった環境中の抗原(アレルゲン)に対してIgEを容易に産生する。
そして正常人ではほとんど起こさない程度のごく微量の抗原に触れただけでアレルギー反応を生じる。アレルギー疾患はいくつかが合併することも少なくない。
例えばアトピー性皮膚炎と小児喘息が合併した場合、アトピー性皮膚炎が悪化すると喘息が軽快し、その反対に、アトピー性皮膚炎がよくなると喘息発作が頻発し増悪する例もある。吸入抗原による喘息と花粉症の合併例もみられる。
6)遅延型アレルギー反応
皮膚科で見られるアトピー性皮膚炎や接触皮膚炎などは遅延型アレルギー反応で発症する。抗原と抗体(感作リンパ球)が反応してから24ないし48時間後に症状が出る。
ただし、アトピー性皮膚炎は遅延型反応で皮膚症状が生じるが、同時に食物、家塵、ダニなどに対するIgE抗体を持ち、I型アレルギー反応も関与することが特徴的である。
アトピー性皮膚炎を除けば多くのアレルギー性皮膚疾患は、一定の物質に感作成立した後、同じ物質に再接触してアレルギー反応が生じたもので、いわゆるアレルギー体質またはアトピー素因によるものではない。
患者がよく口にする「私はアレルギー体質だから」というのは間違いで、たまたまある物質に後天的に過敏になりアレルギー反応を呈したということである。