3)アトピーとは
一般に過敏症は抗原と抗体が反応して生じるが、1923年 Coca とCookはimmunologic mechanism responsible for hay fever and asthma with hereditary cause (遺伝的な原因を持つ枯草熱や喘息を惹き起こす免疫学的メカニズム)により“生まれつき”の過敏症があると主張した。
すなわち、遺伝的素因を持ち、一般の健常人では見られない条件の下で感作され(例えば食物、家塵、ダニなどに対して特異的に誘発される)やすい素因で、この過敏症の患者血清を正常人に移すことができるが、抗原(アレルゲン)と患者血清を反応させても沈降反応がみられないなど当時の常識では奇妙な性質を持っていた。そこでCocaらはこの素因は今までの疾患概念では説明が出来ない(場所がない)という意味で、atopyと名付けた。atopyとはa(無い)とtopia(場所)の合成語である。
4)IgEについて
アトピー素因の持つ抗体に関しては、次に述べる学者たちの研究によって発見された。ドイツの衛生学者Prausnitzは魚アレルギーを持つ婦人科医Kustnerの血清を自分の皮膚に注射し、翌日魚の抽出液を同じ部位に注射した。数分後その部位の皮膚は赤くはれ上がり、患者の血清にアレルゲンと反応してアレルギーを起こす抗体(レアギン)が存在することを証明した(現在ではP-K反応と呼ばれる)。
そして、1966年石坂公成、照子両博士のグループがレアギンを免疫グロブリン(IgE抗体)と同定し、IgE抗体は肥満細胞の表面に結合している(感作状態と呼ぶ)ことを証明した。