家庭用品等に使用される抗菌剤について3 | 化学物質過敏症 runのブログ

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 5. 抗菌加工製品による健康被害の発生実態・原因究明に関する調査、抗菌加工製品中の抗菌剤の分析法の検討: 無機系抗菌剤は汗に溶けづらいことから、皮膚障害の原因とはなりにくい。

銀、酸化チタンについては、ヒトでのパッチテスト陽性例やアレルギー性接触皮膚炎(ACD)事例は、これまで報告されていない。

しかし、抗菌ステンレスの材質成分のニッケル、クロムは代表的な金属アレルゲンであり、遅延型(IV型)アレルギーには十分注意する必要がある。一方、有機系・天然有機系抗菌剤は汗等によって加工製品から皮膚へ移行しやすく、皮膚障害の原因となりうる。

抗菌剤・抗菌加工製品による健康被害について文献検索を行った結果、1996年までは、有機系抗菌剤との病院内での接触あるいは職業的接触による事例がほとんどで、一般消費者における事例報告は稀であった。

有機系抗菌剤では、イソチアゾリノン系化合物の5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(MCI)と2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(MI)の混合物(ケーソンCG)を配合した外国製化粧品、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(OIT、ケーソン893)、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン(BIT)を配合した塗料・接着剤等により、ACD等の皮膚障害が発生していることが報告されていた。

 患者の問診、患者でのパッチテスト(皮膚科医)、感作動物での皮膚テスト(毒性学者)、製品情報(メーカー)、原因製品の化学分析(分析化学者)等により、ACD事例の原因究明を実施した:靴用防カビシールに含まれたアルデヒド系抗菌剤のα-ブロモシンナムアルデヒド(BCA)による事例(1998年)、ビニルレザー製椅子に含まれた有機ヒ素系抗菌剤のオキシビス(フェノキシアルシン) (OBPA)による事例(1997年)、ピリジン系抗菌剤のテトラクロロ(メチルスルホニル)ピリジン(TCMSP)による事例(1998年)、デスクマットに含まれたTCMSPによる事例(2002年)、第四アンモニウム塩化合物(液剤)を用いて洗濯時に抗菌加工した衣類による事例(1999年)、白衣の襟部分に使用されたトリクロカルバンによる事例(2000年)、無圧ふとんの綿製側地に含まれた防ダニ剤のジブチルセバケート(DBS)による事例(2002年)。

6. 抗菌剤の優先順位リストの作成のための基礎データの収集: 細胞毒性試験を実施した抗菌剤のうち、CAS No.が確認できた24物質についてRTECSで検索した結果、急性毒性試験16物質、遺伝毒性試験7物質、生殖毒性試験5物質、皮膚・眼刺激性試験4物質であった。

5物質は比較的多くの毒性試験データが得られたが、他の5物質はRTECSから全く毒性情報が得られなかった。

7. 抗菌剤の変異原性の整理と評価: 遺伝毒性試験として、細菌を用いる復帰突然変異試験、ほ乳類培養細胞を用いる染色体異常試験が通常実施されてきた。

しかし、抗菌剤等、細菌を死滅させる目的で使用される化学物質の遺伝毒性を評価するために、細菌を用いる復帰突然変異試験ではなく、ほ乳類培養細胞を用いる突然変異試験、特にマウスリンフォーマTK試験が有効であることを確認した。8. 抗菌剤の皮膚感作性(モルモットマキシミゼーション法)の整理と評価: 抗菌剤の皮膚感作性をモルモットマキシミゼーション法を用いて調べたところ、20種のうち16種が陽性反応を示し、約7割が「グレードⅤ(非常に強い感作性物質)」であった。

さらに、感作性リスクをより定量的に評価するために、最も強く感作した群を用いて惹起反応の用量反応性を検討したところ、惹起濃度の対数値と皮膚反応平均評価点との間に良好な関係性のある回帰直線が得られた。

9. 抗菌剤の細胞毒性の整理と評価 : NR法でのIC50値を指標として検討した結果、試験対象とした24種の抗菌剤のうち、最も強い細胞毒性物質はzinc bis(2-pyridylthio-1-oxide)、別名ジンクピリチオンで、ほとんどの抗菌剤が強い細胞毒性を示しており、眼刺激性を有する可能性が高いことが推定された。

10. 抗菌剤の生殖・発生毒性の整理と評価: 9種の抗菌剤のうち1種(ZPT)にラット胎児に骨格奇形を誘発する可能性が示唆された。

発生毒性因子の定量法として提唱されている妊娠動物に対するNOAEL/胎児に対するNOAELの比(A/D比)については、いずれの抗菌剤も1以下であった。

11. 抗菌剤・抗菌加工製品による耐性菌の発生に関する評価: in vitro試験において、抗菌剤の第4級アンモニウム塩とは異なり、抗黴剤のTPNでは真菌の発育の最高濃度は継代とともに上昇した。

すなわち、抗黴剤では真菌が抵抗性を獲得することが示唆された。

12. 抗菌剤・抗菌加工製品による皮膚常在菌に対する影響に関する調査、身体の部位別にみた皮膚常在菌の実態調査、抗菌剤・抗菌加工製品の抗菌性の整理と評価:大阪府公衆衛生研究所により、抗菌性試験において、皮膚常在菌のほうが病原性細菌よりも抗菌加工製品の影響をより強く受けていたことが確認された。

また、世田谷区消費者カレッジ上級コース消費者問題研究グループにより、抗菌加工繊維製品の着用試験において、皮膚常在菌への影響をアデノシン三りん酸(ATP)量の変化で追跡したところ、靴下(四級アンモニウム塩、樹脂加工)ではATP量が減少しており、抗菌効果とともに、皮膚常在菌に化学的ストレスが生じていたことが確認された。抗菌加工製品について、実際の使用状況下において、抗菌性のチェックとともに、皮膚常在菌にどの程度の影響を及ぼし得るのかを消費者に知らせていく必要がある。