文献番号 200301276A
結果と考察:
研究課題 抗菌加工製品における安全性評価及び製品情報の伝達に関する調査研究
1. バイオサイドの分類及び規制状況・適用法規等の調査: EUのバイオサイド指令(1998年)、経済協力開発機構(OECD)の規定では、抗菌剤は、殺虫剤、防腐剤等とともにバイオサイドとして用途別に23~27群に分類されている。
一方、米国では、バイオサイドという定義はなく、環境保護庁(EPA)により、抗菌剤、殺虫剤、防腐剤等は農薬も含めた形で規定されている。
日本では、バイオサイドという定義は定着していない。医療用消毒剤は医薬品として、衛生害虫用殺虫剤は医薬部外品として登録され、抗菌剤等、その他の多くの用途では法律による登録は行われていない。
1997年、旧厚生省により「家庭用化学品に関する総合リスク管理の考え方」が策定され、リスク評価をもとにした家庭用品の安全性評価を実施するための自主基準の制定に向けた方針が打ち出された。
それをもとに、防水スプレー(1998年)、芳香・消臭・脱臭・防臭剤(2000年)、家庭用カビ取り・防カビ剤(2002年)について、「安全確保マニュアル作成の手引き」が作成されている。
また、旧・通産省により、「生活関連新機能加工製品懇談会報告書(抗菌加工製品)」(1998年12月)をもとに抗菌加工製品に関するガイドラインが公表された。その方針に沿って、抗菌・防臭加工及び制菌加工された繊維製品については繊維評価技術協議会(SEKマーク)により、プラスチック製抗菌加工製品については抗菌製品技術協議会(SIAAマーク)により、業界での自主基準が設けられている。日本環境協会では、医療用途・食品用途の抗菌加工製品に限定して「エコマーク」の審査対象とし、業界団体の自主基準に沿って認定基準が作成されている。
すなわち、抗菌剤の種類について、大分類(無機系、有機系、天然有機系)、中分類(無機系/銀系、有機系/第四アンモニウム塩、天然有機系/ヒバ油等)および細分類(具体的な化学名)の3段階で製品表示することが求められている。
安全性については、急性毒性、変異原性、皮膚刺激性に皮膚感作性、細胞毒性を試験項目に追加された自主基準が作成されている。
抗菌性試験法については、業界の自主基準とともに、日本工業規格として繊維製品ではJIS-L 1902: 1998、プラスチック製品ではJIS-Z 7250: 2000が制定されており、国際標準規格(ISO)化も進められている。
2. 消費者における抗菌加工製品の製品表示に関するアンケート調査: 製品表示のうち、使用上の注意、緊急時の対処法、成分表示等について関心が高かった。
また、消費者にとって、「理解しやすい(わかりやすい)」、「具体的な」内容であることが最も重要であると指摘されていた。MSDSについては、いずれのグループでも、「知らない」、「見たことがない」という回答が大半であった。MSDSが消費者の目に触れることがいかに少ないかが明らかにされた。
2. 抗菌加工製品における製品情報の伝達手段の実態に関する調査: 2000年以降、「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(化学物質管理促進法、PRTR法:環境汚染物質の排出量・移行量登録制度)、「改正労働安全衛生法」、「毒物・劇物取締法」において、日本で初めてMSDSについて法的な規定が設けられた。
とともに、ISO 11014: 1994に沿ってJIS-Z 7250: 2000が制定され、MSDSが化学物質の有害性等の情報源及び情報伝達の手段として規定された。一方、消費者でのアンケート調査の結果、①抗菌加工製品による健康被害として、アレルギー性接触皮膚炎(ACD)が主なものであったが、ほとんど原因はわからないままであったこと、②抗菌加工製品の表示、抗菌剤のMSDSが健康被害防止のための情報提供の手段としてほとんど有効に活用されてこなかったことが確認された。
4. 抗菌剤・抗菌加工製品の使用実態に関する調査: 抗菌剤は、無機系、有機系、天然有機系に大別される。無機系抗菌剤としては、銀、銅、亜鉛等の抗菌性金属をゼオライト、セラミック、シリカゲル等の多孔性無機材料に担持させたものが主に使用されている。最近では、酸化チタンを配合した光活性型の抗菌剤が登場し注目されている。また、抗菌ステンレスが開発され、電気洗濯機の洗濯槽等の金属部分に使用されている。一方、有機系抗菌剤としては、第四アンモニウム塩化合物等、従来から薬用せっけん、病院等での手指消毒用に殺菌剤として使用されてきたもの等が主に使用されている。
また、天然有機系抗菌剤としては、ヒノキチオール、ヒバ油等、種々の植物抽出物あるいは植物成分が使用されている。大阪府下では、1996年以降3年間で激増した後、2002年度では、抗菌加工された台所用品・日用雑貨品では減少し、家庭用化学製品・乳幼児用品・ペット用品では増加してきたことが確認された。