厚生労働科学研究成果データベースより
http://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIST00.do
研究目的:
本研究の目的は、家庭用品等に使用される抗菌剤について、(1)抗菌剤,抗菌加工製品を取り巻く現状の把握、(2)抗菌剤の優先順位リストの作成、(3)抗菌加工製品における安全確保のための取り組みを検討することにより、家庭用品に含有される化学物質による健康被害防止の観点からの規制基準設定の要否、事業者自らによる製品の安全性確保レベルの一層の向上に資することである。第1年度(平成15年度)として、(1) 抗菌剤,抗菌加工製品を取り巻く現状把握のための実態調査、抗菌加工製品中の抗菌剤の分析法の検討、(2)抗菌剤の優先順位リストの作成に向けた、既存の毒性試験データの収集・整理に関して、分担研究を実施した。
研究方法:
1. バイオサイドの分類及び規制状況・適用法規等の調査: 抗菌剤について、農薬、殺虫剤、防腐剤等と比較しながら、経済協力開発機構(OECD)、欧州連合(EU)・米国・日本における法規制・業界の自主基準において、バイオサイドとしてどのように管理されているかを、メーカー・業界団体への問い合わせ、オンラインデータベース等を用いた文献検索等により情報収集を行った。
2. 消費者における抗菌加工製品の製品表示に関するアンケート調査: 抗菌加工製品に対する消費者意識の状況について文献調査を実施した。
さらに、抗菌加工製品における製品情報の消費者の理解度に関するアンケート調査を消費生活アドバイザー・コンサルタント協会(「NACS」)、アトピッ子・地球の子ネットワーク(「アトピッ子」)、子どもの健康と環境を守る会(「子ども」)を調査対象として実施した。
3. 抗菌加工製品における製品情報の伝達手段の実態に関する調査: 抗菌加工製品について、1995年以降に東京都内で購入したもの、メーカーより提供されたものをサンプルとし、製品表示の内容を比較・検討した。また、抗菌加工製品、抗菌剤のMSDSについては、メーカーに問い合わせて入手し、有害性情報、緊急時の対処法等の記載内容を比較・検討した。
4. 抗菌剤の使用実態、抗菌加工製品の市販実態に関する調査: 既存のオンラインデータベースの検索、文献等の検索、メーカーへの問い合わせ、大阪府下での店頭調査等により、抗菌剤・抗菌加工製品等の使用実態について調査した。
5. 抗菌加工製品による健康被害の発生実態・原因究明に関する調査、抗菌加工製品中の抗菌剤の分析法の検討: 抗菌加工製品による健康被害の発生実態については、MEDLINE, TOXLINE等の既存のオンラインデータベースを用いた文献報告等の検索、メーカーへの問い合わせ等により、調査を実施した。
さらに、ACDにおける原因究明では、抗菌加工製品の材質・用途等によってタイプの違う抗菌剤が使用されているため、原因製品にどのような抗菌剤が含まれているかを分析確認するとともに、患者において陽性反応を示すかどうかを確認し、ACDの原因となっていたかどうかを確認するための系統的な原因究明の手順を検討した。
6. 抗菌剤の優先順位リストの作成のための基礎データの収集: 日本防菌防黴学会から刊行された防菌防黴剤事典-原体編-、Registry of Toxic Effects of Chemical Substances (RTECS ) を参照して、急性毒性、眼及び皮膚刺激性、遺伝毒性、生殖毒性、複合的毒性試験データを収集した。
7. 抗菌剤の変異原性の整理と評価: 18種の抗菌剤について細菌を用いる復帰突然変異試験・染色体異常試験を、一部マウスリンフォーマTK試験を実施し、遺伝毒性に関する評価を行った
.8. 抗菌剤の皮膚感作性(モルモットマキシミゼーション法)の整理と評価 : 抗菌加工製品中の皮膚感作性物質の検索法として、Nakamuraらの多用量モルモットマキシミゼーション法による皮膚感作性試験の定量的評価法を用いて、20種の抗菌剤の皮膚感作性について評価した。
9. 抗菌剤の細胞毒性に関する調査: 24種の抗菌剤について、細胞毒性試験法としてニュートラルレッド(NR)法を用いた。細胞生存率を50%に減少させる添加濃度(IC50 (μg/ml))を求めた。
10. 抗菌剤の生殖・発生毒性の整理と評価 : 9種の抗菌剤を妊娠ラットの器官形成期に投与した催奇形性試験について整理および評価を行った。
11. 抗菌剤・抗菌加工製品による耐性菌の発生に関する評価: 抗菌剤として、4級アンモニウム塩である塩化ベンザルコニウムおよび塩化ベンゼトニウム、防黴剤として使用されているテトラ・クロロイソフタロニトリル(TPN)を用いて、真菌に対する長期接触による抗真菌活性の変化を検討した。
12. 抗菌剤・抗菌加工製品による皮膚常在菌に対する影響に関する調査、身体の部位別にみた皮膚常在菌の実態調査、抗菌剤・抗菌加工製品の抗菌性の整理と評価: 抗菌剤・抗菌加工製品による皮膚常在菌に対する影響、身体の部位別にみた皮膚常在菌の実態、抗菌剤・抗菌加工製品の抗菌性について、MEDLINE, TOXLINE等の既存のオンラインデータベースを用いた文献報告等の検索、メーカーへの問い合わせ、自験例での検討結果等により調査した。