Ⅲ 学校施設の新築、改築、改修時の対応編
学校施設の新築、改築、改修等に伴い、使用される各種建材、施行材(接着剤、塗料等)から発散する揮発性化学物質により、健康被害が発生しないよう、十分な配慮が必要となります。
1 計画・設計段階について
できるかぎり化学物質の放散がない、若しくは少ない建材等の選定を・・・
建材等(接着剤、塗料等を含めた建築現場で使用する材料)の選定については、日本工業規格(JIS)、日本農林規格(JAS)、国土交通大臣認定、MSDS(化学物質等安全シート)などで確認し、化学物質放散量がない、又は少ないものを選定します。
工事請負契約の際には、使用する建材等の条件を設計図書(特記仕様書)に明記することも必要です。
2 工事発注段階について
(1)できるかぎり化学物質の放散がない、若しくは少ない工法の選定を・・・
揮発性有機化合物の発散ができるかぎり少ない工法を選定します。
(2)十分な養生・乾燥期間を確保した工期の設定を・・・
施工した建材等から放散される揮発性有機化合物の放散量は、時間とともに低下してきます。
そのため、揮発性有機化合物を放散させるために、換気の励行に配慮した養生・乾燥期間を十分に確保した工期設定とするよう配慮が必要です。
(3)揮発性有機化学物質の検査の位置付けを・・・
「学校環境衛生の基準」の臨時検査の規定に基づき、揮発性有機化合物の濃度が基準値以下であ
ることを確認した上で引き渡しを受ける必要があります。そのため、設計図書(特記仕様書)には引き渡し前の検査を位置付け、その旨を明記することが必要です。
(4)児童生徒、教職員等に対する十分な配慮を・・・
既設学校での新築、改築、改修等の工事については、事故防止のための安全面はもとより、児童生徒や教職員等に対して化学物質による影響を及ぼさないよう、工事の実施時期や工事区域の設定などに配慮することが必要です。
3 施工監理段階について
工事請負者より提出される施工計画書や施工要領書の記載内容等の確認や設計図書(特記仕様書)などで指定した建材や施工方法で施工されているかを現場で確認します。
【確認事項例】
・設計図書等で指定された建材であるか
・設計図書等で指定されている建材や施工方法となっているか
・室内空気汚染物質(揮発性有機化合物等)を速やかに排出するための施工中の換気が励行されているか
・下地の養生や乾燥期間が適正に確保されているか
・改修工事や補修工事等の場合の工事範囲以外との区画がなされているか
(揮発した溶剤等が工事範囲外へ流入しないような配慮が必要)
・美装工事(クリーニング)で使用するワックス、洗剤、薬剤などの材料は化学物質の低減に配慮されているか
など
4 しゅん功建物の引き渡し時について
(1)揮発性有機化合物の検査結果の確認を・・・
「学校環境衛生の基準」の臨時検査の規定に基づき、揮発性有機化合物の濃度が基準値以下であることを確認した上で引き渡しを受けます。
(2)基準値を超過した場合は、こんな対応を・・・
基準値を超過した場合は、原因の究明に努めると共に、換気の励行や汚染源(発生源)の除去等の対策を講じます。引き渡しについては、再度検査を実施し、揮発性有機化合物が確実に基準値以下であることを確認する必要があります。
【建物引き渡し前の各種抑制対策例】
換気の励行、ベークアウト※、空気清浄機の運転、吸着剤(材)の設置、汚染物の除去など
※ ベークアウトとは
室温を上昇させ、建材などに含まれているVOCの放散を促進する方法