産業中毒の予防と診断のための生体試料中有害物質及びその代謝物・付加体の超微量分析手法の開発研究2 | 化学物質過敏症 runのブログ

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結果と考察:
①除草剤メコプロップ(MCPP)中毒患者の血清と尿のHPLC分析では、MCPP以外にそれぞれ4本、2本の未知ピークが検出された。

このうち6.8分に溶出するピークaは比較的高いピークであった。

MCPPとピークaのUVスペクトルは殆ど同一で、230および280 nmに吸収極大を示した。MCPPのLC-MS分析ではm/z 213 ([M-H]-)が検出され、ピークaについては[M+16]-の質量を示し、MCPPに酸素の付加したものと示唆される。入院時の尿中および血清中MCPPはそれぞれ1050、522 mg/lであったが、両者ともに2相性の減衰を示した。

②Hg曝露作業者の尿中ポルフィリンのクロマトグラフでは8C(ウロポルフィリン:UP)~4C(コプロポルフィリン:CP、IとIII)が分離溶出されるが、これら以外に未知ポルフィリンのピーク(Unknown:UK)が5CとCPIの間に観察された。

このUK濃度はCPIIIを標準物質として計算した。UPとUKでは曝露群は非曝露群に較べて有意に高値であった(それぞれ9.7±2.9μおよび8.4±2.6μg/gCre、p<0.05(UP)、5.1±2.3および3.4±1.7μg/gCre、p<0.01 (UK))。

血中プロトポルフィリン濃度および尿中ALA濃度は曝露群と非曝露群の間で有意差はみられなかった。UKのみが血中・尿中水銀と有意な正の相関を示した(それぞれr=0.407および0.451)。

Mnを投与した3群のラットでは用量に応じて血中Mn濃度の上昇が認められた。HPLC(ゲルろ過)-ICP-MSにより分画したクロマトグラフでは、溶出順にA~Eの5本のピークが出現した。

このうちピークDに検出されるMn量が全血Mn(Mn-B)と非常によく相関し、溶出位置から低分子の蛋白質に結合したMnの可能性が高い。これが投与したMnを反映する血液中のMnの化学型の可能性が示唆された。③低濃度有機溶剤を使用する仏壇漆器製造工場における、ベンゼン曝露の幾何平均は0.022ppm、幾何標準偏差は5.690であった。

トルエン、キシレンも幾何平均で1ppm以下であった。

ベンゼン曝露濃度とt, t-MAとの相関係数は0.307~0.490の範囲にあった(p<0.02)。回帰分析からベンゼン濃度をX、t, t-MAをYとした場合、勾配は350.7~411.5、切片は276.6~395.3の直線式が得られた。

回帰および相関分析により、本調査の様な低濃度混合曝露下でも、トルエンの曝露指標として尿中ベンジルメルカブツール酸が、キシレンでは尿中の総メチル馬尿酸が優れていることが示唆された。

ヘキサンは許容濃度(40 ppm)の半分以下の低濃度曝露であったが、遊離およびtotal 2,5-ヘキサンジオンとも個人曝露濃度との間に良好な相関が認められ、何れも生物学的曝露指標として有効であった。

④新築棟の病理検査室における空気中ホルムアルデヒド濃度の検討では、気中ホルムアルデヒドのパッシブサンプリング(y ppb)とアクティブサンプリング(x ppb)は非常によく相関した(y=1.15x-7.31、n=3、r=0.999)。病理検査室内の10カ所のパッシブサンプリングの結果では、切り出し場の1ヵ所で282 ppbと指針値を上回ったが、他の場所ではいずれも指針値以下であった。検査室内の業務時間中の個人曝露濃度では切り出し作業を行った技師1名が147.5ppbとやや高値であったが特定作業場の指針値内であった。旧棟の病理解剖室における作業時の個人曝露濃度は、技師2名が413 ppbと711 ppbであり指針値を上回っていた。

⑤2,4-TDI投与ラット尿のLC-MS分析では、2,4-TDAace(4)と2,4-TDAace2が代謝物として同定できた。

後者のマススペクトルではm/z 207のピークが2,4-TDAace2に由来するイオンで、m/z 224はその水付加イオンと帰属した。この他に、monoacetylated TDAおよびその水酸化体、カルボキシル体の尿中排泄が推定された。

これらの結果より、生体内でのTDIの代謝にはN-acetylationのほか、CH3-oxidation、ring-hydroxylationが関与していることが推定できた。

これらの尿中代謝物はLC-MSで容易に直接検出可能であることから、作業者での生物学的モニタリングとして利用可能である。2,4-TDI投与ラット尿ではLC-MSにより2,4-TDAace2が主要な代謝物として検出されたが、その量は加水分解して測定されるTDAの量の10%程度であり、上記以外の代謝物の存在も予想される。
結論:
①除草剤メコプロップ中毒患者でメコプロップおよびその代謝物の尿・血清中での測定法を開発し、病態把握に寄与した。

②金属Hg曝露者で尿中の未知ポルフィリン分画を生物学的影響モニタリングの指標として利用可能となった。Mn曝露を反映する血液中のMn結合蛋白質の存在を明らかにし、生物学的モニタリング指標としての利用可能性を示唆した。

③ベンゼン、トルエン、ヘキサンなどの低濃度曝露で利用可能な生物学的モニタリングの項目を確立した。

④新築棟の病理検査室のホルムアルデヒドについて調査し、おおむね良好な環境にあることを明らかにした。

⑤TDIの尿中代謝物として2,4-TDAace(4)と2,4-TDAace2を同定し、これらを容易に高感度測定することが可能となり、作業者の生物学的モニタリングとして利用できることを明らかにした。


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今回は専門用語の羅列でしたね(-。-;)

何とかわかったんですが今後は自重します