シックハウス症候群診療マニュアル18 | 化学物質過敏症 runのブログ

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(皮膚科)
Ⅰ アトピー性皮膚炎
皮膚科受診歴のあるSHS患者に、どのように診断されたかをアンケート調査したところ、「アトピー性皮膚炎」と診断されていたケースが多い事が判明し、鑑別すべき最も重要な疾患と考えられる。アトピー性皮膚炎と考えられる患者を診察した際には、原則通りではあるが環境要因の一つとしてホルムアルデヒド等を念頭に置く必要がある。

皮疹は露出部に多くあらわれ、ドライスキンや紅斑、掻破痕が見られる。

Ⅱ アトピー性皮膚炎の増悪

ホルムアルデヒド等の暴露によりアトピー性皮膚炎が増悪することがある。狭義のSHSでは、SHSの症状が伴わないアトピー性皮膚炎の増悪はSHSとは診断せず、単に悪化因子とみなす

しかし、広義のSHSを臨床分類したIshibashi らの報告に従えば、4型に分類されることになる。

つまり、アトピー性皮膚炎がホルムアルデヒド等で悪化した場合、狭義にはSHSとは言えないが、広義ではSHSと言って良いことになる。さらに、SHSと皮膚病変(疾患)の関連を層別化してまとめた岩月らの報告では2群に分類され、狭義にはSHSではないが、関連病態として捉えることを提唱している。加えて、SHSとアレルギー疾患の合併は高率(30-50%)であり、SHSを発症した個体にアトピー性皮膚炎が合併している率は高い。

逆にアトピー性皮膚炎の5%程度にはSHS様症状を呈することがわかった(班会議報告、2006)。従って、アトピー性皮膚炎患者の診療にあたっては暴露を受けたための単なる増悪因子との解釈に留めずSHSの合併を念頭において慎重に鑑別を進めることが必要である。
Ⅲ 蕁麻疹
SHSの皮膚症状として、露出部にそう痒性の淡い紅斑あるいは膨疹を呈する例が多い。このような症例では蕁麻疹との鑑別が重要となる。SHSでは随伴症状として、「チクチク、ピリピリ」といった症状を呈するが、この場合はSHSが強く疑われる。また、SHSの皮膚症状であれば、抗ヒスタミン剤の治療反応性が悪いことが臨床的に観察されている。
ホルムアルデヒドに感作されている個体が、歯科治療でホルムアルデヒドを使用し、数分後に蕁麻疹が出るような場合はSHSとはいわない。この場合はⅠ型アレルギーと呼ばれる。

Ⅳ 接触皮膚炎
SHSの皮膚症状は露出部に出やすく、境界が明瞭なこともある。そのような時は鑑別が必要なことがある。
ホルムアルデヒドに感作されている個体が、掃除の際にホルマリンに触れて皮膚炎を起こすことがあるが、この場合はSHSとはいわない。この場合はⅣ型アレルギーと呼ばれる。

Ⅴ 膠原病
ある種の膠原病は蕁麻疹様紅斑を呈する。SHSでは全身倦怠感を呈しやすく、これら皮疹が存在するとき膠原病の鑑別が必要となる。