そえだ信「君に、最大公約数のテンプレを」第129話「問いかけてみた」王女の利用価値 | クラシック音楽と読書の日記 クリスタルウインド

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そえだ信「君に、最大公約数のテンプレを」、3月15日「129 問いかけてみた」が公開されています。

 

サスキアのヘンネフェルト公爵との関係などが知られても彼女の護衛の任務が変わることはありませんでした。

『しかし、逆に。その後しばらくしてサスキアと同時に配置された新人護衛と元からの一名が異動になった後、後任が赴任することはなかった。

 見習いにせよ一名配置されているのだからそれで十分、という判断になったのか。もしかすると、これで人件費が節約できて助かる、ということになったのかもしれない。』

『当然不備ということになるのだから、何処か人事関係の窓口に訴えるべきなのだろう。しかし当時のサスキアは、そのような機構を何も知らされていない。公爵経由で要求するとなると大ごとになりすぎる。何よりもサスキアに公爵を当てにする気が失せていたし、まだ子どもの判断力で、最善が浮かばない。』

『結局そうするとサスキアの性格上、極端に走ることになる。自分でできることは一人でやってしまえ。というわけだ。

 その後サスキアは、第四王女邸に住み込むことにした。もちろん夜の不寝番はできないが、王女の寝室で自分も就寝することにすれば警護はできる。』

 

しかし、サスキアが王女の部屋に寝泊まりするようになって半年ほど経った頃、事件が起きました。

珍しく外出した王女をサスキアの隙を突いた暴漢が襲ったのです。突き飛ばされた王女は右肘が大きく腫れる怪我をしていました。

『急ぎ王女を抱きかかえて邸に戻り、侍女に医者を呼びに行かせた。

 医者は追って派遣される、という返事だったが。

 いくら待てども、やってこない。

 何度侍女に催促に行かせても、もう少し待て、というだけだった。

 サスキアの応急手当のまま横たわり、王女は発熱して呻いている。

 夜になっても、誰も来ない。

 ここに到って、サスキアは理解した。医者を派遣する気など、誰にもないのだ。』

『すべてを諦めて、サスキアは王女邸に戻った。

 とにかくも自分で、できることをするしかない。

 何とか邸内にあった湿布薬を塗り、取り替え、添え木をして押さえる。額に濡れ布を置いて熱を抑える。

 三日三晩意識の混濁を続けた後、王女は目を覚ました。

 熱は下がってその後健康を取り戻したが、右肘は変形したまま治らなかった。』

この事件は捜査されることも無く実行犯が特定されることもありませんでした。

 

何処にも味方はいない、サスキアは悟りました。私が一人で王女を守るしか無い。

『王女に怪我をさせた責任、というだけではなかった。とにかくこの世でこの小さな少女を護るものは自分一人、という義憤めいたものに駆られ。』

まだ10歳だったサスキアは一生をかけてこの王女を護り通す決意を固めたのでした。

 

「もうそんなの、見捨てておけばいいのに」とニール(つまりその王女自身(笑))が言います。

「そんなこと、できるか」とサスキア。

「まあニールの言うことももっともだが。そこで自分一人でも、と考えるのがサスキアなんだろう」(ハック)

「そうなんだよねえ」(ニール)

「サスキアなんだから、仕方ない」(ハック)

「仕方ない、ねえ」(ニール)

 

ニールとハックの掛け合いに怒るサスキア。

「何でそこで二人、分かり合っているか!」

 

「まあそういうわけで、その後ほぼ誰も信用せず、二人だけで防衛に努めてきたということになる。およそ七年間か。そのかんわたしは何とか機会を作って、何回かに分けて騎士団の訓練に入れてもらい、修行を積むことにしたが。とにかくわたしが剣の腕を磨いて、十分な護衛を務められるようにしなければならないからな」

「その期間は、護衛を離れることができたのか」

「さっきも出た、必要な場合には臨時の護衛の派遣を要請できるってやつでな。昼の間だけ、派遣された護衛に立ってもらった」

 

「一言で言えるものでもないがな。まあそのかんの詳細は置いておこう。問題の日、昨年二の月の十三の日の夜だ。その王族一同が惨殺された直後ということになるのだろう、ヘンネフェルト公爵の息がかかった衛兵が、こちらの邸に知らせに来てくれた。王宮で起きた概略を説明し、当然間もなく第四王女の命も狙われることになるだろう、すぐに逃げよ、と」

 

二人は男の百姓服を着て変装し山道を抜けて逃げることにしました。

自分の髪を切ろう、と言い出したのはニールでした。

サスキアは断腸の思いでその美しい髪に刃物を当てたのでした。

 

二人辛い山越えを果たしゲルツァー王国、マックロートの街に入りました。そしてそこからさらに危険を避けるためプラッツの町を目指したのでした。(プラッツで孤児たちの仲間になり、その後ハックと出会ったのです。)

 

「つまり二人は、クラインシュミット王国の新王に命を狙われているということか」

「それなんだがな」

「もしかするとあちらの狙いはニールの命ではないのかもしれない、という可能性に気づいた」

 

バルヒエット公爵にすると、最上位の王位継承権を持つ王女、つまりニールは利用価値があるのでは無いか、とサスキアは言います。

「今は軍の力でヘンネフェルト公爵や他の貴族を押さえているのだろうが、貴族や民衆からの支持をもっと上げておきたいはずだ。そのために、ニールを自分の妃にしようとする考えがあるのではないか。」

 

いずれにしろ、春になればクラインシュミット王国の捜索も厳しくなるでしょう。

「そこを考えるとやはり、早めにここは去るべきだろうな」

 

「ニールには、母国に戻って王族の務めというのか、そういうのを果たすつもりはあるのか。」ハックは問いかけます。

『「ない」ニールは、即答した。「王族、嫌。そんなオッさんの嫁、もっと嫌。死んだ方がまし」』

サスキアももう実家への未練も何もない、と言います。

 

 

 

 

 

 

 

 

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