そえだ信「赤ん坊の起死回生」第三章第152話「赤ん坊、報告を読む 1」戦闘は始まった | クラシック音楽と読書の日記 クリスタルウインド

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そえだ信「赤ん坊の起死回生」、11月25日夜第三章第152話が公開されています。

 

苦渋の決断から数日が経ちました。

ルートルフは、前線から送られてきたという報告書を読みます。

 

『以下は、開戦の二日後、前線から送られてきた報告の抜粋だ。

 砦の前で弓隊として参加することになった予備兵の手記、だという。』

 

『昨夜上官から受けた指示では、この朝三刻までに王都から指令が届き、戦端が開かれるかの決定が下される。いざ開戦となったら、この隧道から殺到してくるはずの敵兵を横合いから射撃するのが俺たちの役割だ。

 その朝三刻まで、あと一刻を切る頃合いになっている。』

『敵は、この砦に詰めた味方兵たちより人数が多いぐらいらしい。

 いざ戦が始まったら、俺たちの役目は敵の全滅ではない。味方の応援が駆けつけるまで、何としてもこの砦を護ること、と言われている。』

 

「開戦だ。皆、怠りなく準備せよ!」

「は!」

「くれぐれも、指示に従え。まちがっても抜け駆けして逸早く射撃を始めるなど、するなよ。昨日の打ち合わせと微妙に変わる場合もある。絶対に合図に合わせて行動すること! いいな?」

「は!」

 

『間もなく、隧道の向こうから地を震わすような、大勢の喚声が聞こえてきた。敵兵たちの、勝鬨かちどきらしい。

 これから戦端を開くというときなのに、もう勝利を確信したとでもいうような声の張りだ。』

『味方のその軍勢からも、ときの声が上がった。

 少し離れたこちら両側の高台でも、それに続く。

「しまっていこう!」

「おう!」

「勝利を我らに!」

 声の尾が空に消えた後は、緊張の静寂が張りつめた。』

『二列、三列、と隧道から姿を現す。そろそろ二百名には上りそうだ。

 指示は、まだか。

 弓に矢をつがえて、待つ。

 指示は、かからない。

 もう、二百名ははるかに越えたのではないか。その倍を数えたとしても不思議はない、という気がしてくる。

 合図は、まだか。』

 

紐を使った罠や、『風』に『火』を乗せた攻撃など、先の打ち合わせで話し合われた攻撃が次々と繰り出されます。しかし・・・やはり・・・

 

『足どりを緩めていた敵兵に赤い『火』が襲いかかり、慌てて盾や手でそれを振り払うのが見える。

 だがほとんどの『火』は、そのまま隧道の中に吸い込まれていく。

 出口の両脇や上に潜んでいた味方兵たちは、急ぎ身を隠し遠ざかったようだ。

 それを見届けて、気を取り直した。

 俺たちの役目は、分断された先頭の敵兵への射撃だ。

 改めて集中し、矢をつがえた弓を引き絞る。

 その瞬間。

「わあああーーー!」

何処からか、大勢の怒声が重なり響いてきた。

 続けて――。』

 

じりじりとした緊張感が続きすっきりとしなかったここ数回でしたが、ついに戦闘は始まってしまいました。そこでいったい、何が起きたのでしょう? 物語は大きく展開していきそうです。

 

 

 

 

●「赤ん坊の起死回生」第一章目次リンク

 

●「赤ん坊の起死回生」第二章目次リンク

 

●「赤ん坊の起死回生」第三章目次リンク

 

 

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「そえだ信「臼月トウコは援護りたい」面白かった。 被疑者の無実を証明しようと証言を剃ればするほど、被疑者のアリバイを崩していくキャラクターにまつわる、すっきりするミステリ短編集!」

 

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「「臼月トウコは擁護りたい」、読了!倒叙モノの醍醐味の一つに犯人の焦燥感があると思うのですが、本作はこれが思う存分に楽しめて良いですね。使えないバイトとして犯人の目の前に出現する上に、自分の犯罪の弱点はきっちり刺してきて、クビだ!!!にいたる様式美が好き。ドラマにも向くのでは?」

 

「『臼月トウコは擁護りたい』読んだぜ。 北海道(主に札幌)を舞台にした連作倒叙。犯人が上手く警察の追及を避けられたかな、ってところにふらりと「そうですよーこの人が犯人なワケないじゃないですかー」と加勢しに来たかと思ったらスーパー余計なことを言って急転直下事件を解決しちゃう臼月さんは」

 

 

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二月の苫小牧。完全犯罪をもくろむ男が用意した完璧なはずのアリバイは、意外な人物によって崩される。人を【援護/まも】るつもりが、いつも必ず容疑者にしてしまう――史上最も不器用な「探偵」が活躍する、デビュー作『掃除機探偵の推理と冒険』に続く新感覚ミステリ

 

 

 

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掃除機探偵の推理と冒険 (ハヤカワ文庫JA)

刑事の鈴木は、目覚めるとロボット掃除機になっていた! しかも眼前には男の死体が……。『地べたを旅立つ』改題。解説/辻真先

 

 

解説者は、辻真先さん。とても素敵な解説でした。ぜひご一読下さい。

 

 

 

 

 

そえだ信、いよいよ国際的作家に?(笑)

 

タイの次は、台湾、でした。