オットー・クレンペラーとフィラデルフィア管弦楽団 1962年の「英雄」 | クラシック音楽と読書の日記 クリスタルウインド

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オットー・クレンペラーは1962年10月、ユージン・オーマンディの招聘に応じ訪米し、フィラデルフイアでの3回の公演を皮切りにニューヨーク、ワシントン、ボルティモ等でフィラデルフィア管弦楽団を指揮してのコンサートを行いました。戦前戦中は(ナチスのユダヤ人迫害から逃れてアメリカに亡命していたため)アメリカとは関わりの深かったクレンペラーですが、これが久し振りの訪米でまた生涯最後のアメリカでの演奏記録となりました。

 

この時の演奏は、フィラデルフィアでの3回の公演がライヴ録音されて残っています。

 

1962年10月19日
ベートーヴェン:交響曲第6番 ヘ長調, Op.68「田園」
ベートーヴェン:交響曲第3番 変ホ長調, Op. 55「英雄」

1962年10月27日
ベートーヴェン:「エグモント」序曲
ブラームス:交響曲第3番ヘ長調 Op.90
シューマン:交響曲第4番ニ短調 Op.120

1962年11月2日
J.S.バッハ:ブランデンブルク協奏曲第1番ヘ長調 BWV.1046
モーツァルト:交響曲第41番ハ長調 K.551「ジュピター」
ベートーヴェン:交響曲第7番イ長調 Op.92

 

今日はその最初の演奏会でのベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」をYouTubeで見つけた音源で聴きました。

 

第1楽章の頭から、いかにもクレンペラーらしいゆったりとしたテンポで始まります。遅いテンポですがそれだけに細部の音の動きが克明に伝わってくるようです。少し強めのアクセント。ゴツゴツした無骨さもありますがしかしそれでも音楽はしっかりとした推進力を持って拡がっていきます。ライヴですから完璧な演奏とは言えないところもありそうですが、しかしそこはさすがフィラデルフィア管弦楽団。見事なアンサンブルを聴かせてくれます。そして管楽器の音になんとも言えない色気のような物が。

第2楽章の深さ、そして第3楽章での力を感じさせるクレッシェンド。フィナーレの迫力。素晴らしい演奏でした。

 

この10月19日のコンサートのCDの紹介文の中に

「クレンペラーはそもそもストコフスキーの後任と目されていたのにそれが破談となったためにオーマンディとは深い確執がありました。」

と言う文章があります。いったい何があったのかちょっと興味深い感じはしますが・・・(笑)

 

オーマンディーは1938年にストコフスキーの後任としてフィラデルフィア管弦楽団の常任指揮者となっています。その頃クレンペラーはロサンゼルス・フィルの音楽監督でした。そして1939年に脳腫瘍で倒れ、「この病をきっかけに元来患っていた躁鬱病も悪化、奇行が目立つようになり、以後アメリカでのキャリアは完全に断たれる。」(Wikipedia オットー・クレンペラー より)

 

オーマンディーとの確執の内実はともかくクレンペラー自身にとってこの時期のことや、アメリカでの経験はあまり思い出したくない事だったのかも知れませんね。しかし、この1962年の一連のライヴ録音はとても素晴らしい物でした。

 

バッハ、ブラームス、シューマン、モーツァルトにベートーヴェンの7番、どれもこれも聴き応えのありすぎる演奏。とても・・・、と言うかやっぱり凄い、です(笑)

 

 

TBRQ9006/07 ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」、第6番「田園」 クレンペラー(指揮)フィラデルフィア管弦楽団(STEREO、ライヴ)UHQCD

良好なステレオ録音でリリースのクレンペラー+フィラデルフィアの正規盤シリーズ。肝心のオール・ベートーヴェン・プログラムについては、オーケストラ・アーカイヴの音源に難があり、商品化が見送られておりました。本年ついに良好な音源をペンシルバニア大学にて発見! これで3プログラムが全て揃いました。クレンペラーはそもそもストコフスキーの後任と目されていたのにそれが破談となったためにオーマンディとは深い確執がありました。1935年の登壇後27年振りのフィラデルフィア客演が決まった際には新聞でも大きく取り上げられ大ニュースとなりました。 ヴァイオリンは、左右両翼。低弦左サイドの古典型オーケストラ配置。強烈な遅いテンポで繰り広げられるシリアスなベートーヴェン。超デッドなホール故に輪郭がはっきりし、緊張感の途切れがありません。オーケストラの個性が強く、金管の華やかさや木管の巧さは特筆もの。巨匠はこの時一か月以上アメリカに滞在し、フィラデルフィアのみならず、ニューヨーク、ワシントンDC、ボルティモアへも巡演しました。そしてこれが最後のアメリカ訪問となりました。「英雄」はこの前年に飛行機墜落で命を落とした国連事務総長ダグ・ハマーショルドに捧げられております。万感胸に迫る名演です。

 

 

 

TBRQ9000 ブラームス:交響曲第3番、シューマン:交響曲第4番 クレンペラー(指揮)フィラデルフィア管弦楽団(STEREO、ライヴ)UHQCD

1962年のクレンペラーは体力気力が充実と見えて、鉄槌を下すような強烈な拍節感。『エグモント』で頭が下がります。ブラ3の迫力とダンディズム。シューマンのシリアス。フィラデルフィア管自慢の木管のチャームと妙技。オーケストラの魅力もちゃんと生かして聴かせるのが巨匠で見事なものです。

 

 

 

TBRQ9001/02 ベートーヴェン:交響曲第7番、モーツァルト:交響曲第41番「ジュピター」、バッハ:ブランデンブルク協奏曲第1番 クレンペラー(指揮) フィラデルフィア管弦楽団(STEREO、ライヴ)UHQCD

バッハの煌びやかで楽しい演奏。『ジュピター』の華麗で全世界を俯瞰してしまうようなスケールの大きさも最高。十八番のベト7もライヴが少ないのでずんずんと盛り上がる当盤は必携の名演。UHQCDで万全の音質で正規発売となります。