チェリビダッケ 74歳と33歳のブラームス交響曲第4番 デビュー直後から見せていた巨匠の片鱗 | クラシック音楽と読書の日記 クリスタルウインド

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昨日は何故かカラヤンばかり聞き続けてしまいました。それじゃ、今日は。

 

やはりチェリビダッケ(笑)

 

以前このブログで戦後すぐまだ若きチェリビダッケがベルリン・フィルを指揮した演奏を取り上げたことがあります。

 

 

その記事に掲載した演奏がこちらです。

1945年11月21日に録音されたブラームスの交響曲第4番

 

上記の記事には

「チェリビダッケと言うとイメージするのは後年のとんでもないスローテンポで、細部まで磨き込まれたような精密な演奏、という感じですね。
この若い日の演奏はそれとは違い生気に満ちたテンポ設定で瑞々しく熱い音楽を展開していきます。しかし音やアンサンブルの精度の高さは後年の姿を彷彿とさせる物もあり、何よりほんの少し前までフルトヴェングラーが君臨し続けていたベルリンフィルから引き出すその音楽は凄みさえ感じさせます。」と書きました。

 

そして、今日のこの記事の冒頭に掲載した動画は、1986年10月15日 東京文化会館でライヴ録音された、ミュンヘン・フィルとのブラームスの交響曲第4番です。この2つの録音の間には41年の隔たりがあります。30代前半の青年指揮者は74歳の巨匠になっているのです。

 

東京でのライヴはやはり先の記事の一文にも書きましたようにこの曲の演奏ではあまり経験したことがないようなスローテンポで始まります。遅いテンポですが音楽はけっして澱むことなく、すみからすみまでもの凄い緊張感を維持したまま進んでいくのです。もの凄い構築感。しかし例えばクレンペラーの演奏のようなゴツゴツした石造りの建造物が見えてくる感じとはまた違います。巨大なのに細部まで彫琢され磨き込まれたような不思議な存在感。アンサンブルの精度はライヴとは思えないほど高く、音の透明感も驚くべき物があります。そして次第次第に盛り上がってくる音楽の感興の深さ。

 

オーケストラも違いますし、何よりテンポ設定は大きく違うのですが、1986年の演奏と1945年の演奏には何か共通する物を感じます。一つは演奏の隅から隅まで切れることのない緊張感。そしてオーケストラの見事な透明度。デビューしてからその晩年に至るまでこの指揮者の耳の良さはまったく変わっていないようです。そしてテンポに拘わらずどこまでもけっして緩むことなく緊張感を維持できる能力。この人は本当に天性の指揮者なのだなと再確認させられました。

 

この人があれほど録音嫌いでなければ、と思ったりしますが、それもまたこの巨匠の個性、と思うと納得せざるを得ませんね(笑)

 

 

 

ブラームス:交響曲第4番、R.シュトラウス:死と変容、他

ミュンヘン・フィルがチェリと残した最高のブラームスと自負する伝説の10月15日ライヴを完全収録。
 確かにこのブラームス。大変な熱気と美しさ! この世の演奏会とは思えぬ、チェリのかけ声もこだまする壮絶なコーダに至っては聴く側、声も出ぬ、といったところ。リハーサルも約30分弱収録されており、大変参考になります。

 

 

 

チェリビダッケ、若き日の名演 ~ ベートーヴェン : 「レオノーレ」 序曲 | ブラームス : 交響曲 第4番 (The Art of ''Young'' Celibidache ~ Brahms : Symphony No.4 | Beethoven : Leonore Overture No.3 / Berliner Philharmoniker) [CD] [国内プレス] [日本語帯解説付]

★ 戦後まもなくチェリビダッケがベルリン・フィルを振った貴重音源。長らく廃盤だったTAHRAレーベルの名盤をALTUSレーベルがライセンスし、リマスター復刻しました。フルトヴェングラーの後継者と目されていた若きチェリビダッケの、覇気にあふれた力強い演奏が音質も新たに復活します。
★ フルトヴェングラーがナチスと協力関係にあったとして演奏活動停止処分を受け、後任のボルヒャルトが米軍の誤射で亡くなってしまうという、ベルリン・フィル激動期に30代の若さで指揮台に上がることとなったチェリビダッケ。1947年にフルトヴェングラーが復帰するまで、代理首席指揮者のような地位につき実質上の後継者として認識されていました。ここに収録された演奏は晩年のものに比べれば荒削りな所はあるものの、ゆったりと荘重なアダージョから強烈な推進力にあふれるアレグロまで、テンポとテンションを大胆にコントロールし白熱した音楽を構築しています。じっくり耐えに耐えて最後に爆発するレオノーレ3番、暗い情念渦巻く濃厚なブラームス4番。それらの鮮烈なイメージに向かい、もがきながら何とかして表現し伝えようとする壮絶さ。明らかにカリスマの片鱗を感じさせつつも、未だ整理しきれていないドロドロとした何かを内に秘めた、この時代のチェリビダッケならではの演奏です。如実にフルトヴェングラー色のあるベルリン・フィルの響きも当盤の魅力をより一層深めています。