おまえは上をやれ。俺は裾野を広げる。「山本直純と小澤征爾」 | クラシック音楽と読書の日記 クリスタルウインド

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Youtubeで山本直純さんをしのぶ、と言う動画を見つけ観ました。

 

私たちにとっての山本直純という人は音楽家という以上にテレビのタレントの一人だったかも知れません。大きいことはいいことだ、のチョコレートのCMや船舶振興会のCMが記憶に残っています。そして「オーケストラがやって来た」はいつも楽しみでした。

 

男はつらいよの主題歌もドリフターズ8時だョ!全員集合の音楽もこの人の作品。一年生になったら、なんて童謡もありますし、私は合唱をやっていましたから「田園・わが愛」と言う合唱組曲も記憶に残っています。幅広いジャンルにわたる音楽は、明るいメロディの中に味わい深さもある親しみ深く感じられる物が多かったような気がします。

 

 

昔は随分大袈裟な仕草をする、ただの愉快なおじさん、と思っていたのですが、こうして映像を見ると、その指揮が実にうまいのだと言うことにあらためて気付きます。無造作に腕を振り回しているように見えて、その動きは自然で美しい図形を描いているのです。考えてみれば、日本の指揮者を数多く産んだ斎藤秀雄の一番弟子、と言うか所謂斎藤学校の最上級生のような存在。岩城宏之も小澤征爾も基本的なことは山本直純から教わったはずです。この動画の中では小澤征爾も岩城宏之も山本の耳の良さについて語っています。なるほど、指揮者としても凄い実力の人だったのだな。あらためて山本直純という人の凄さを感じさせられ、健在な頃にもっと触れる機会があれば良かったなと思ったりしました。

 

この動画の中で小澤征爾さんも語っていましたが、以前読んだ「山本直純と小澤征爾」と言う本の中にあった「お前は世界に出て、日本人によるクラシックを成し遂げろ。俺は日本に残って、お前が帰って来た時に指揮できるよう、クラシックの土壌を整える」と言う言葉を思い出しました。クラシックの裾野を広げる。誰かがやらなければならないことだと使命感を持って頑張った活動が日本の音楽界に大きな足跡を残したのだと思います。岩城さんもそうだけどもう少し長生きして欲しかったね。小澤さんには、くれぐれも健康に留意して、ずっとずっと頑張って欲しいな。

 

山本直純と小澤征爾 (朝日新書)

「「お前は世界に出て、日本人によるクラシックを成し遂げろ。
俺は日本に残って、お前が帰って来た時に指揮できるよう、クラシックの土壌を整える」
小澤征爾は、自分より優れた才能を持つ山本直純の激励を受けて日本を飛び出し、
クラシック界の巨匠への道を駆け上がって行く。
一方で山本直純は、「男はつらいよ」「3時のあなた」「8時だよ、全員集合」などのテーマ曲を手掛け、音楽の素晴らしさを庶民に伝え続ける。
しかし、その多才さゆえに、彼はクラシック界では異端の扱いを受けてしまった。クラシックを心から愛し、新日本フィルの立ち上げに奔走した二人の錯綜した人生をダイナミックに描く一冊。」(Amazon 商品の説明 より)