「太陽にほえろ!」の音楽は、ショーケンこと萩原健一が大野克夫を製作側に熱心に推薦したことで始まった。
「ダマされたと思って、大野さんでやってくれ」
僕がこのことを知ったのはLP "太陽にほえろ!ベスト" のライナーノーツ中の岡田普吉(番組プロデューサー)の言葉だった。
太陽にほえろ!ベスト/井上尭之バンド (1976)
しかし、当時の人脈がどうなっていたのか…僕がそれを知ったのは1990年代以後のこと。
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避けて通れないのは「GS(グループサウンズ)」の流行の末期に登場した ”PYG(ピッグ)" というバンド。
3つのバンドからメンバーが集結した「スーパーグループ」だ。
CD "GOLDEN☆BEST PYG” のライナーにはその例として "BLIND FAITH" と "CROSBY, STLLS & NASH" が挙げられているが、僕(1964年生まれ)や僕より若い1970年前後生まれにとっては "ASIA" を挙げたを方が分かりやすいかも。
"PYG" のメンバー…
"ザ・タイカーズ" から 沢田研二(Vo)、岸部修三 (b)※
"ザ・テンプターズ" から 萩原健一(Vo)、大口広司 (ds)
"ザ・スパイダース" から 井上尭之 (g)、大野克夫 (kb)
※現在は俳優の岸部一徳
…というツイン・ヴォーカルの6人編成。
決して「寄せ集め」ではなく「GS」の先を見据えたバンドだった。
しかし、「成功」したとはいえず、解散ではなく自然消滅した…ようなのだ。
スタジオ・アルバム1枚、ライヴ・アルバム1枚。そしてアルバムに収録されていない曲のシングル数枚…レコードとしてはそれが全てだった。
ライヴ・アルバムの収録後にドラムの大口広司が脱退し、原田裕臣が加入。
PYG!/PYG (1971)
FREE with PYG/PYG (1971)
GOLDEN☆BEST/PYG (2004)
(シングル盤音源を全て収録したベスト盤)
PYGの曲…
作詞には外部ライターの名前(安井かずみ、山上路夫、リンダ・リー、大橋一枝)もあるが、メンバーでは岸部修三が目立ち、萩原健一、大野克夫の名前もある。
作曲は全てメンバーによるもので、井上尭之と大野克夫を中心に時に沢田研二も書く…というスタイルの上、アレンジは全曲PYG名義になっている。
こんな観点から、「太陽」のサウンドの原点はPYGにあると考えてもいい気がする。
一方、1971年内に、萩原健一+PYG 名義のシングルや沢田研二のソロ名義作品も出ているのが短命グループの証なのかも知れないが。
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PYG と 「太陽」の音楽を繋ぐ曲…と言っていいのかどうか。
PYGの最後のシングル「初めての涙」のB面「お前と俺」。
作詞:岸部修三、作曲:大野克夫。リードヴォーカルは井上尭之。
リリースは1972年11月21日。
「怒り」のテーマの原曲?
歌メロ以外はそのままなのがお分かり頂けるだろう。
このシングルリリース時、既に「太陽にほえろ!」は放映中。
沢田研二が犯人役で出演した第20話「そして、愛は終った」の放映日は12月1日。
「太陽にほえろ!」の劇伴としての「怒りのテーマ」は初回のセッションで「メインテーマ」同じく、1972年6月23日(に録られている。
当然「太陽」のメインテーマも同じ日に録られており、大野克夫は "PYG" として演奏したと捉えていたので、番組放映開始時の "井上尭之バンド" のクレジットに驚いたのだとか。
"太陽にほえろ!70's BEST" で公表された「メインテーマ」の演奏メンバーは以下の通り。
大野克夫 (Hamonnd)
市原宏祐 (Sax)
原田裕臣 (ds)
岸部修三 (b)
井上尭之 (g)
しかし「太陽」の音楽が「レコード化」されるのは、まだ先のこと…
part 2 に続く。