「80年代」、「ブレイクしたとは言えない」、「ビクター」、「アニメ」がキーワードのアイドル・シリーズ。
岡本舞子、冨永みーな…続く3人目は宮里久美。
アイドルにとって、イメージとは…
背中ごしにセンチメンタル/風のララバイ (1985)
(※2面ジャケット)
宮里久美…1969年10月1日生まれ。
良くも悪くも OVA "メガゾーン23"(1985) とは切っても切れない。
メガゾーン23 音楽編 (1985) オリジナル・サウンドトラック
"超時空要塞マクロス"(1982-1983)に関わったスタッフを中心に製作された作品。
当時、宮里久美は15歳という計算になる。
「宮里久美」名義でリリースされた作品はアルバム3枚、シングル3枚、ベストアルバム1枚。
彼女の声のイメージを大雑把に捉える上で…「聖子と明菜」のどちらなのかと言えば、それは「明菜」のタイプであり、本人が目標としていたのは「山口百恵」なんだそうな。
宮里久美は「ホリプロタレントスカウトキャラバン」に参加、入賞は逃したがモデルとしてスカウトされたことが芸能界デビューのきっかけだったという。
しかし、本人の意向は「とにかく歌一本で」だったとか。
僕が宮里久美の歌を初めて耳にしたのは、やはり "メガゾーン23" の劇中歌であり、「時祭イブ(ときまつりいぶ)」の声を演じたこと。
彼女の歌声は年齢が想像つかないほど落ち着いている上に「影」を感じさせる…そんな印象だった。
瞳でウィスパリング (1985)
"メガゾーン23" に使用されたシングル盤の2曲を含む彼女の1stアルバム。
収録曲の作家…
作詞は、三浦徳子が全て担当。
作曲は、中崎英也、馬場孝幸、白井良明、佐藤健、芹澤廣明。
編曲は、水谷公生、渡辺敬之、渡辺博也、鷺巣詩郎。
…という布陣。
ま、手堅い人選と言えるかも知れないが、僕の感想としては "メガゾーン23" 使用の2曲と他の曲にギャップがあるように思えてならない。
それぞれの楽曲のクオリティに格差があるということではなく、アルバムとして統一感が今ひとつ…ということ。
しかし、OVA "メガゾーン23" はヒット作となり、続編が製作された。
メガゾーン23 PARTⅡ 音楽編 (1986) オリジナル・サウンドトラック
秘密く・だ・さ・い/ロンリー・サンセット (1986)
(※2面ジャケット)
そして宮里久美の2ndアルバムもリリースされる。
ALLERGY (1986)
この 2nd も "メガゾーン23" に使用されたシングル盤の2曲を含む。
収録曲の作家…
作詞は、松井五郎が全て担当。
作曲は、中崎英也、芹澤廣明、鈴木キサブロー、山川恵津子、河合夕子。
編曲は、川村栄二、鷺巣詩郎、椎名和夫。
…という布陣。
僕の感想としては…またしても "メガゾーン23 PARTⅡ" 使用の2曲と他の曲にギャップがあるように思えた。
アルバムとしての統一感は前作と同じく「作詞」にあると言えなくもないが、「サウンド」はどうかを問うなら、1stと同じギャップがあると言わざるを得ない。
同じ1986年、3rd シングルがリリースされる。
ふたりのサン・ジョルディ/真夏 Magic (1986)
さらに、ベスト・アルバムもリリース。
FOR YOU/KUMI MIYASATO BEST COLLECTION (1986)
これは 1st と 2nd からのセレクトに、3rdシングル "ふたりのサン・ジョルディ "(B面の "真夏 MAGIC" は "ALLERGY" の収録曲)を加えた構成になっている。
当然、"メガゾーン23" 絡みの1st と 2nd シングル収録の4曲も収録されている。
オリジナル・アルバム2枚の段階でベスト・アルバム…ま、そういう事例はなくもないが、当時の「レコード業界」の事情があるように思う。
1980年代中頃にはLPとCDが並行して(発売日の時間差とか収録曲違いとかはあったが)リリースされるようになったけれど、「シングル盤」として「8㎝CD」が登場するのは1988年。
だから、宮里久美のシングルはアナログ盤しか存在しないわけで、このベスト・アルバムしか "ふたりのサン・ジョルディ "をCDで聴ける盤はなかったわけだ。
それに14曲63分弱という構成もCDだから可能だったわけで。
1987年には 3rd アルバムをリリース。
UNFINISHED (1987)
タイトルが意味深…これが、ラスト・アルバムになっただけに。
収録曲の作家…
作詞は、来生えつこ、松井五郎、麻生圭子、田口俊、沙都美、三浦徳子。
作曲は、佐藤健、宇崎竜童、山川恵津子、井上ヨシマサ、SHOJI。
編曲は、川村栄二、椎名和夫。
…という布陣。
とはいえ、「アルバムとしての出来」はこの 3rd が一番良いと思う。
それは楽曲のバランスが整っているから。
そしてアルバムからは、プロモ盤シングルが出ている。
WATER BLUE/RAINY BOY (1987:Promo)
…"RAINY BOY " の作詞が "沙都美" とクレジット(作曲は山川恵津子)されているが、"沙都美" とは宮里久美のペンネームだ。
作品のリリースはここまでで、彼女は1989年に引退した。
残された音源には彼女の15~17歳のヴォーカルが記録されていることになる。
何故、彼女はブレイクしなかったのか。
それは、僕の超個人的見解だけれど、宮里久美の「イメージ」に統一感が薄かったから…ではないかと思っている。
それは音楽以外の部分においても。
改めてシングルのジャケットを並べてみる。
そしてアルバム(CD)のジャケットも。
アルバム "ALLERGY" と "FOR YOU" のジャケ写は同じフォト・セッションによるものだと想像がつくが…何かイメージがバラバラに感じるのは僕だけだろうか。
そもそも彼女とアニメのキャラクター「時祭イブ」にもイメージのギャップが…少なくとも僕にはあったし、彼女のルックスと歌声にもギャップがあった。
しかし、魅力的な声の持ち主なのは間違いないし、僕は今もそう信じて疑わない。
だから、高額であっても中古盤を探しまわり、CD4枚を揃えた。
気に入ったミュージシャンやバンドの音源は全て揃えたくなる…
それが僕の悪い癖(笑)
「メガゾーン23」のイメージを切り離さないと宮里久美のヴォーカリストとしての魅力は伝わらない…それが僕の持論。
アニメ自体はDVD化などで再発されているが、宮里久美のアルバムは一度も再発されていない。
アナログのシングルとLPを聴いたことはないけど、80年代リリースのCDはデジタル・リマスタリングの技術が確立されていないが故に、現在の耳で聴くと「のっぺり」とした音質に聞こえる。
一度くらいはオリジナル・アルバム3枚をデジタル・リマスター再発する価値は十分にあると思っているのだが。
欲を言えば、「メガゾーン23」のサントラ盤のみ収録の "TOMORROW BLUES" と "ふたりのサン.・ジョルディ" をボーナス・トラックで入れた仕様で…(^o^;)
「80年代」、「ブレイクしたとは言えない」、「ビクター」、「アニメ」がキーワードのアイドル・シリーズ。あと1回予定しています。