高岡早紀 | 今夜はきまぐれ~Mustangのひとりごと~

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~WHO'LL BE THE FOOL TONIGHT~ Music Monologue by Mustang
ホントにきまぐれな更新でございます…(^^ゞ

「80年代」、「ブレイクしたとは言えない」、「ビクター」、「アニメ」がキーワードのアイドル・シリーズ。

 

岡本舞子、冨永みーな、宮里久美、そして4人目は高岡早紀。

厳密には80~90年代ということになるが…

 

彼女現在もバリバリ現役で俳優のイメージが強いし、最近ではNHK朝ドラ「おかえりモネ」(2021)の高村沙都子役が記憶に新しいところ。

でも、デビュー直後はアイドル歌手としての活動もあった。

 

僕が高岡早紀を知ったのは、たぶん映画「CFガール」(1989)だと思う。

同じ頃にOVA「メガゾーン23Ⅲ」(1989)にも出演、宮里久美の後任として「時祭イブ」の声を担当しているが、彼女の「歌声」を初めて聞いたのがこの作品だ。

 

高岡早紀。1972年12月3日生まれ。

1988年(13歳)にモデルとしてデビュー、1988年(15歳)に「マドラス」のCMに出演し、そのCM曲 "真夜中のサブリナ"で歌手デビュー、1989年、前述の映画「CFガール」で俳優デビューしている。

 

 

シングル7枚、オリジナル・アルバム4枚、ベスト・アルバム1枚を1991年までに発表し、以後は歌手活動から遠ざかることになる。

 

 

真夜中のサブリナ

真夜中のサブリナ/NON!NON!NON! (1988)

(両面ともオリジナル・アルバム未収録)

 

 

2ndシングルA面は「メガゾーン23Ⅲ」使用曲で、マドラスのCM曲。

 

眠れぬ森の美女

眠れぬ森の美女/オーロラの微笑み (1988)

(B面はオリジナル・アルバム未収録)

 

 

3rdシングルもマドラスCM曲で、ここから8㎝CDになる。

 

悲しみよこんにちは

悲しみよこんにちは/ソレイユ (1989)

(カップリングはオリジナル・アルバム未収録)

 

 

 

そして、1stアルバムがリリース。

 

01 sabrina

Sabrina (1989)

 

このアルバムの作家陣は…

作詞:森雪之丞、安井かずみ、真名杏樹、サエキけんぞう

作曲:加藤和彦、清水信之、千住明

編曲:加藤和彦、清水信之、千住明

(基本的に作曲者が編曲も行っているが1曲だけ加藤和彦作曲、千住明編曲になっている)

…作曲は加藤和彦が10曲中7曲と圧倒的に多い。シングル3枚のA面全曲も加藤和彦の作だ。

そして、スタッフ・クレジットの最後に "Specia Thanks:Kazuhiko Kato" とクレジットされている。

 

 

全体にヨーロピアンでファンタジックな雰囲気は加藤和彦による部分が大きいと思って間違いないだろう。実際、アルバム4枚全てに曲提供しているので、高岡早紀の歌手としてのイメージを決定づけたと言っていいかも。

高岡早紀のやや細い声は時に伸びやかで、時にウィスパー調な歌い方もサウンドにマッチしていると思う。

 

 

 

続くシングルは…

 

薔薇と毒薬

薔薇と毒薬/パンドラの舟 (1989)

 

カップリングは「メガゾーン23Ⅲ」使用曲。しかし2曲ともオリジナル・アルバムには未収録。

 

 

フリフリ天国

フリフリ天国/見知らぬ彼女への伝言(1990)

 

これは2ndアルバムの先行シングルといっていい。

2曲ともアルバムに収録されている。

 

 

02 楽園の雫

楽園の雫 (1990)

 

パッケージは現在で言う 「Clamshell Box」 の中に通常のプラケースCDと「写真集」が入っている。

 

 

このアルバムの作家陣は…

作詞:森雪之丞、鈴木博文(1曲のみ)

作編曲:加藤和彦(6曲)、高橋幸宏(2曲)、千住明(1曲)

大雑把には前作から清水信之が抜け高橋幸宏が入った格好。

サウンドは前作の延長上にあると言っていい。

 

 

 

3rdアルバムは、ヨーロピアンな雰囲気がより強くなる。

 

03 romancero

Romancero (1990)

 

曲のタイトルに「セザンヌ」「ジプシー」「ヴェニス」「プリマヴェーラ」という言葉が見られるだけでなく、サウンドもアコーディオンもしくはバンドネオンのような音、フラメンコ調のスパニッシュ・ギターなどが今まで以上に聞こえることも印象的。

 

 

ジャケット・アートもコンセプチュアルで、厚い表紙にブックレットとディスクトレーを取り付けた形状の凝ったものになっている。

 

 

作家陣は…

作詞:安井かずみ

作曲:加藤和彦(5曲)、千住明(3曲)、J.Brahms (1曲)

編曲:加藤和彦、千住明

…ここでも基本的に作曲者が編曲も行っていて、1曲だk J.Brahms(ブラームス弦楽6重奏曲、第一番第二楽章)の曲を千住明がアレンジしている。

 

 

作家が絞られた分、トータル・イメージもしっかりまとまった印象の作品になった。

 

 

6thシングルは、3rdアルバムからのカット。

 

セザンヌ美術館

セザンヌ美術館/悲しみのヴェニス (1990)

 

 

続いてベスト・アルバムを発表。

 

04 mon cher

Mon cher (1991)

 

シングル6曲に1stアルバムから "ナイフの鳥、綺麗な石"、2曲の新曲を追加の上、"Introduction"、"Intermission"、"Coda" と短いインスト曲(作曲:千住明)を交えるという凝った編集になっている。

 

 

シングルのうち、"真夜中のサブリナ" と"薔薇と毒薬" はアルバム初収録。

 

 

 

アイドルとしてのラスト・アルバムはシングルと同時発売。

 

05 s'wonderful

S’Wonderful (1991)

 

Ni-ya-oo

Ni-ya-oo/カ・ル・ナ・バ・ル (1991)

(カップリングはアルバム未収録)

 

過去のアルバムとはイメージが違うのは加藤和彦の関与度合いの違いだろうか。

「スパイ・ミステリー」がコンセプトになっているらしく、ヨーロピアンというよりは無国籍、レトロとモダンが混在するミステリアスなムードの作品に仕上がった。

 

 

作家陣は…

作詞:森雪之丞、真名杏樹、サエキけんぞう、桜井鉄太郎

作曲:加藤和彦、高橋幸宏、大沢誉志幸、高橋鮎生

編曲:加藤和彦、高橋幸宏、桜井鉄太郎、矢野誠、高橋鮎生

…ぐっと、メンバーが増えた。

これが、無国籍な雰囲気をもたらしたのだろうか。

 

 

また7枚目のシングルは初めて加藤和彦の作品ではなくなった(カップリングは加藤和彦の曲)し、アルバムのクレジットにも "Special Thanks" の項目がない。

 

 

しかし、アルバムとして散漫な印象はなく、バラエティに富んだ内容だと思うし、高岡早紀のアルバムでは一番好きな作品だ。

 

 

ただ、当時の音楽雑誌のレビューによると、ほとんどプロモーションされなかったらしく、筆者もそれが残念だと書いていた。

 

 

06 le fetiche

Le Fétiche (1995)

 

1988~1991年までの全作品から選曲…とはいえ、3rdからの選曲がシングルの "セザンヌ美術館"だけとか、この時点でのアルバム未収録曲が一切含まれていないとか…イマイチ納得できない(笑)ベスト盤。

ま、CDケースサイズの写真集とディスコグラフィーがついていることぐらいが、得した気分になれるかも。

それでもトータル約70分でCDの枠をほぼ使い切っている。

 

高岡早紀のアルバムはアナログLPがリリースされていない。

しかし、尺は最長の "Mon Cher" でも44分台。そもそも、オリジナル・アルバムの収録曲数が9~10曲だ。

まだ当時はCDの尺でアルバムを作る時代ではなかったかも知れないが…

 

 

アルバム未収録曲がフォローされたのは…

 

07 golden best

ゴールデン☆ベスト ~シングル・コレクション & モア~ (2009)

 

シングルの14曲に "Mon Cher" の新曲2曲に「メガゾーン23Ⅲ」のサントラ盤のみだった "悲劇のアイドル" を加えたベスト盤。

 

 

但し、アルバム未収録曲が「全て」フォローされたとは言い難い。

 

 

4th シングル収録の "パンドラの舟“は「メガゾーン23Ⅲ」にはリミックス・ヴァージョンが収録されていて、これが唯一残った未収録曲になる。

違いは頭から1分程がほぼアカペラ(演奏をミュート)になっていること。

 

 

megazone 3

MEGAZONE 23 Ⅲ ORIGINAL SOUND TRACK (1989)

 

以上が高岡早紀のアイドル歌手時代の全作品だ。

 

 

彼女は2013年、デビュー25周年から歌手活動を再開しアルバムも発表している。

 

 

同じ2013年にはアイドル時代のオリジナル・アルバム4枚がアルバム未収録曲やシングル曲のカラオケをボーナス・トラックとして再発されている。

その再発盤 "楽園の雫" には "パンドラの舟" のリミックス・ヴァージョンも収録されたようだ。

 

アイドル時代のアルバムはどれも出来は良いと思うが、高岡早紀に歌手のイメージが薄いのは、「歌番組」の減少とセールス的に大ブレイクしなかったからかも知れない。

 

しかし、「メガゾーン23Ⅲ」のイメージで聴くとかなり印象が違う。

それは、彼女のアルバムは高岡早紀の世界がしっかり確立されているからだろう。

 

 

 

「80年代」、「ブレイクしたとは言えない」、「ビクター」、「アニメ」がキーワードのアイドル・シリーズ、これにて完結。

 

 

 

<ボーナス・トラック>

1992年か…